作者名:恩田 陸 ハヤカワ文庫JA
日本人だけが地球に居残り、膨大な化学物質や産業廃棄物の処理に従事する近未来。エリートへの道は唯一、「大東京学園」の卒業総代になることであった。しかし、苛酷な入学試験レースをくぐりぬけたアキラとシゲルを待ち受けていたのは、前世紀サブカルチャーの歪んだ遺物と、閉ざされた未来への絶望が支配するキャンパスだった。やがて最下級の「新宿」クラスと接触したアキラは、学園の驚くべき秘密を目にするが……。
「大東京学園」の存在意義に疑問を感じはじめたアキラは、何者かの計略により「新宿」クラスへと降格になってしまう。そこでは、リーダーのシマバラはじめ13人の生徒たちが、学園からの脱走計画に命を燃やしていた。一方、肉親の死に絶望し、20世紀への想いを募らせるシゲル。それぞれの想いが交錯するなか、学園最大のイベント「大東京オリンピック」の開催日にして、”脱走の特異日”である10月10日が迫っていた--。
恩田陸の作品で、一番ぶっとんでいるかも?
少年たちの戦いが熱い!昭和への愛も熱い!
何なの、このハイテンション度:★★★★★
とにかく、他の恩田作品に比べると、テンションが高いです。
幻想的な雰囲気、しっとりしたミステリという印象だったので、最初はなんじゃ!?と思いました。
でも、面白い!
主人公2人はすぐに好きになるし、めちゃくちゃな学校のシステムも、
随所にある20世紀サブカルチャーネタも、盛り上がっちゃう!
某有名テーマパークも映画も、容赦なくネタにしますとも!
ちなみに、単行本の表紙がこちら。↓
ぶっとび感と、昭和漫画のノリ感が、伝わってきませんか?
新宿クラス、熱いぞ!度:★★★★
東京23区の名前で、クラスのランク分けがされています。
アキラは、途中から最下級の‟新宿”クラスに落とされるのですが、
そこにいるメンバーは、脱走を企てていたのです。
このメンバーが、頑張るんですよ…。
友情が切なくって切なくって(泣)
以前の学生が残したヒントを手掛かりに、怪しい学園から脱走しようとする新宿メンバー。
アキラを救おうと奮闘する、シゲル。
アキラを目の敵にする職員(イッちゃってます)と同級生。
アキラとシゲルと関わる、謎の少女キョウコ。
全員の想いと計画が、‟大東京オリンピック”で暴走する!
ついでに、某有名キャラクターたちも暴走する!(笑)
20世紀サブカルチャーへのオマージュ度:★★★★★
荒廃した地球に残された子どもたちは、昔の娯楽作品を楽しむこともできません。
しかし年頃の少年、昔の面白そうなことに興味津々。
違反行為をしたら、円盤型の飛行船に網で捕まえられるような、
訳のわからない学園でも、何とか楽しもうとします。
「コスプレ研究会」を「明日の学生服を考える会」とか、ごまかしちゃって(笑)
サブカルチャーって、人生の一部だな~としみじみ思いました。
各章のタイトルも、有名映画のもじりです。
芸が細かいというか…。
元ネタがよく分からなかった人のために、
巻末に「20世紀サブカルチャー用語大辞典」がついているという、親切さ!
これぞSFエンタメ小説!
‟ちょっと昔”が、すごい恋しくなってきます。
懐かしくって、笑えて、泣ける!