作者名:似鳥 鶏 光文社文庫
貧乏極まり行き場を失くした小磯は、学生課で寮費千三百円という怪しげな「富穰寮」を紹介される。大学キャンパスの奥の奥。そこでは、変人の寮生たちが奇妙な自給生活を繰り広げていた。しかも部屋には、夜な夜なヨリコさんという「血まみれの女」が現れるという。ヨリコさんの正体を解き明かそうとする小磯は、やがて世界の存続をかけた戦いに巻き込まれていく!
世界を救うため、変人寮生たちが立ち上がる!
青春でエンタメでホラーでSF!
ごった煮の鍋のごとくカオスな傑作!
寮生活に爆笑度:★★★★★
貧しい大学生・小磯は新入生のために新しい寮を出なければならず、
生活のために、伝説的にやばい寮と言われる、富穰寮に移る羽目になります。
そして、そこでのとんでもない暮らしに愕然とすることに!
勝手に寮の年号を定め、ブービートラップのごとく穴が開いている廊下を歩き、
池にはピラルク、外をガラパゴスゾウガメが歩き、
なぜか小学生の女の子と母(大学生ではない)が住んでいる。
‟透け感”たっぷりの壁を叩き、壁ドン通信で連絡を取る。
緑色のパンツダケを栽培し、銘酒死体洗いで乾杯し、
就寝中は結構な確率で、窓や天井に血まみれの女性・依子さんが出現し、
常識が通用しない変人たちが、特に気にせず生活している。
……奇々怪々すぎて、もはやどこから突っ込んだらいいものか(笑)
最初は、この富穰寮の生活描写が面白すぎて(小磯くんの突っ込み語りが素晴らしい)、
半分くらいは、ずっと笑いながら読んでいました!
森見登美彦さんとか、万城目学さんとかの、
コミカルな文章が好きな人は、絶対笑えると思います。
それ真面目に検証しちゃうんだ⁉度:★★★★
最初は、とんでも学生生活中心ですが、
この寮に適応しちゃうだけあって、小磯青年もなかなかの変わり者。
依子さん遭遇率が、なぜか抜群に高い彼は、
「いかに怪奇現象とはいえ、こんな存在を研究もせずにスルーしてよいものか」などと考え、
先輩たちと一緒に、依子さんの謎を探ることに。
怪奇現象だから、重力とか法則とか気にせんでも(汗)
研究気質の学生が、突っ込み少なめメンバーで真剣に考えだしちゃうと、
こんなことになるのか…。
SF的思考と理系知識を用いて、仮説は立てたものの、
その後すぐに、依子さん問題は、予想外の展開を迎え、
なんと寮生は、世界存亡をかけた戦いに臨むことになるのです!
どんな展開⁉という感じですが、この辺はもう楽しむしかない!
青春コメディからのホラーからのSFからのエンタメという、
てんこ盛りの、ある意味贅沢な作品になっています。
思いがけないSF度:★★★★
物語後半は、本当に超展開です。
まさか、こんな壮大な作品だったとは…。
個人的には、世界の危機を救うため、変人が立ち上がるという話は好物なので、
かなり好きな作品です。
変人寮生たちの、おのおのの見せ場があって、なかなか熱い!
パンツダケは食べていいのか?とか、
銘酒死体洗い(限りなく消毒用エタノール)は飲んでいいのか?とか、
腋の下で、パンを発酵させることができるのか?とか、
なぜ壁に解読した学生が発狂する数式が書いてあるのか?とか、
これって、すでに犯罪行為ではないのか?とか、もう気にしちゃだめ。
小磯君の突っ込みが面白いから、それでいいのです。
心躍っちゃう珍妙な青春物語(冒険あり)!
他ではあまり読めない作品になっております~!