【ミステリ】王とサーカス|米澤穂信の初期傑作「さよなら妖精」から10年後、記者となった太刀洗万智。訪れたネパールで、王族が射殺される事件が起き、その後、彼女の前に、文字を刻まれた死体が…。多くのランキングで第1位に輝いた傑作ミステリ!この本から読んでも大丈夫です。

作者名:米澤 穂信   創元推理文庫

*第1位『このミステリーがすごい!2016年版』国内編ベスト10

*第1位〈週刊文春〉2015年ミステリーベスト10/国内部門

*第1位「ミステリが読みたい!2016年版」国内篇

*第3位『2016本格ミステリ・ベスト10』

海外旅行特集の仕事を受け、太刀洗万智はネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王殺害事件が勃発する。太刀洗は早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクション、米澤ミステリの記念碑的傑作。

実際に起きた衝撃的な事件を、道を模索する記者の目線から描く!

異国情緒に満ちた、読み応えのあるミステリです。

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異国の描写に引き込まれる度:★★★★

本作の舞台は、2001年のネパール。

中国とインドという、2つの大国にはさまれた、ヒンドゥー教の国で、

主人公・太刀洗万智は、首都カトマンズに取材に来ています。

5年間、新聞記者として働いていましたが、

ある出来事から退職、現在はフリーの記者として、

アジア旅行の記事を書くために、ネパールに単身やってきたのですが…。

なんと、突然王宮で、王と王妃の一家が、皇太子に射殺されるという、

とんでもない大事件が起きてしまうのです。

これは、実際に起きた事件であり、その様子が詳細に描かれていて、

読者も、リアルタイムで巻き込まれているかのような迫力が!

また、序盤から、ネパールの町の様子や人々、食べ物や文化が、

丁寧に描写されていて、

あまりよく知らない国の暮らしがのぞけて、

異国の町歩き感があって、面白かったです。

事件と葛藤を描く度:★★★★★

王宮での事件を取材する彼女は、ある関係者に話を聞けることに。

しかし、その人物からは、記者としての在り方を、

根源から考えさせられるような、問いをされます。

答えられず、ひたすら答えを模索する、万智。

自分で調べ記事を書き、他者へ伝える者としての苦悩と葛藤が、

じっくりと描かれた作品で、

情報を受け取る一般市民という立場の読者も、考えさせられる内容になっています。

ミステリとしても面白いですが、

情報の発信者と受け手の問題を、深く描いていることも、

作品の高評価の理由かと思いました。

悩む万智ですが、その後彼女は、

背中に刃物で文字を刻まれた、男性の他殺体を発見。

それは彼女の知っている人物で、刻まれた文字は、非常に意味深なもの。

この殺人事件は、王宮の事件と関係があるのか、

混乱の状況下において、何を書いて何を書かざるべきなのか。

考え続ける万智は、ついに殺人の真相に行き着きますが…。

殺人事件ミステリとしては、スタートが遅いのですが、

クライマックスの謎解きは、驚きの真相がどんどん明かされます。

伏線が張られた、緻密な大人のミステリとして面白い!

緊迫感とスケール度:★★★

太刀洗万智が、最初に登場する「さよなら妖精」は、

デビュー作「氷菓」の少し後に出版された、初期の長編ミステリ。

ユーゴスラヴィアから来た少女と、万智たちが出会い、

日常の謎を解明していく、青春ミステリですが、

それだけにおさまらない、重厚な作品でした。

だいぶたって出版された「王とサーカス」では、10年後の万智の活躍を描いているわけですが、

王族の射殺という、センセーショナルな事件で、

ネパールは緊迫の状況に陥り、作品には緊迫感が満ちていますし、

さらには殺人事件まで起きてしまいます。

「さよなら妖精」とはほとんど絡みがないので、本作だけでも十分面白いですが、

雰囲気がけっこう異なりますし、どちらも傑作なので、気になるかたはぜひ両方とも。

「王とサーカス」は、ベルーフシリーズとして、

「真実の10メートル手前」が出ています。

殺人事件の真相とともに、なぜ取材して記事を書くのか、

という問いの答えをも求める万智。…たどり着く結末とは?

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