作者名:パトリック・デウィット 創元推理文庫
粗野で狡賢い、冷血漢の兄・チャーリー。ふだんは心優しいけれど、キレると大変なことになる弟・イーライ。悪名とどろく凄腕の殺し屋シスターズ兄弟は、雇い主の“提督”に命じられるまま、ある山師を消しにカリフォルニアへと旅立つ――理由はよくわからぬまま。ゴールドラッシュに沸く狂乱のアメリカ西海岸、シスターズ兄弟は、この目も当てられないダメな旅路で、何に出遭い、何を得て、そして何か失うのか? 小説のあらゆる感情を投入し、世界の読書界に一大旋風を巻き起こした、総督文学賞など四冠制覇、ブッカー賞最終候補作!
カウボーイ映画とは、違う味わい!
波乱の旅が、兄弟を変える…荒野を行く男が好きな人におすすめです。
なぜか憎めない度:★★★★
自分勝手でエゴイストな皮肉屋、兄チャーリー。
態度が大きい兄に振り回される、弟イーライ。
チャーリーもたまに詰めが甘くて、憎めないキャラですが、語り手の弟イーライは、より憎めません。
ケガをした馬を見捨てられなかったり、出会う変人にも同情したり、
ちょっと優しくしてくれた女性に有り金を渡してしまったり。
こういう繊細でお人好しなところは、殺し屋とはいえ、微笑ましく思ってしまいますね。
しかし、油断するべからず。
弟も、だてに〝噂のシスターズ兄弟” の片割れではないのです。
よく人にしてやられてしまう、隙の多いタイプだけれど、
けんかっ早い兄のサポートをしてきたせいか、
何だかんだで、血の濃い兄弟なのか、
2人まとめて暴れる事態になったら、さあ大変!
チャーリーが一人で好き勝手やったら困るし、
イーライが、一人でため込んで爆発しても困るし、
兄弟一緒に暴走されても困る。
お互いが、抑止力にも促進剤にもなる、非常に困った2人組です!
つかず離れず、カウボーイ兄弟度:★★★
結局、兄弟は仲がいいのか悪いのか?
一緒に殺し屋をしながら旅をするくらいだから、険悪ではないけれど…何だか、いまいち解らない。
口喧嘩は、しょっちゅうですしね。
ずっと一緒にいる兄弟でも、お互いに一筋縄ではいかない思いを抱えているみたいです。
幕間の話も、何だかとっても象徴的。
2人の関係が、この旅でどう変わるのか、どこにたどり着くのか…この作品の見どころです!
今まで、この兄弟に影響を与える人物は、あまりいなかったのかもしれませんが、
今回の旅では、彼らの考えに変化をもたらすような出会いが。
男たちの絆に、要注目!
男たちの生き様度:★★★★★
旅で出会う人々も、何があったらそんなことに⁉という奇妙キテレツっぷり。
この時代、この地域。
平和に生きるのは、至難の業だったのかもしれません。
目的地にいた2人の男の人生も、兄弟に負けず劣らず波乱万丈。
こうして生きてきた男たちは、何を求めて西海岸にたどり着くのか。
危機に陥ったとき、本当に求めたものは何だったのか。
山師の計画と、その結末は?
おかしな旅は、ときに切なく泣きたくなりそう…。
忘れたころに読み返して、また兄弟の旅を見たくなる。
切なくおかしく、ときに愛おしい…奇妙な西部劇!