作者名:ジョナサン・キャロル 創元推理文庫
フラニー・マケイブ。クレインズ・ヴューの警察署長で、元不良少年。目の前で死んだ三本脚の犬を埋葬して以来、彼の周囲で奇妙な事件が続く。美しい羽根を残して忽然と家から消えた夫婦。なぜか戻ってくる犬の死体。その上変死した女子学生のスカートから同じ羽根が見つかる。いったい誰が、何を企んでいるのか?そして彼のもとに、使命を携えて謎の男が訪れる。鬼才の新たな傑作。
警察署長マケイブが育った町、クレインズ・ヴューで起きる、数々の異変。
実はこれらの出来事は、とんでもない事態の一部で…
予想できない奇想天外な物語!
摩訶不思議な展開度:★★★★★
舞台は、アメリカのとある町、クレインズ・ヴュー。
主人公のフラニー・マケイブは、昔は地元で有名な不良少年でしたが、
今はまっとうになり、警察署長を務めています。
妻と娘とともに、平穏に暮らしていましたが、
ある日突然、警察署に連れてこられた、
3本足で片目の弱った犬「オールド・ヴァ―チュー」を埋葬してあげた後から、
奇妙な出来事に遭遇することに。
喧嘩ばかりしていた夫婦が、美しい羽根を残して消えてしまったり、
変死した女子生徒のスカートから、同じ羽根がみつかったり…。
挙句の果てには、会うはずのない人物に遭遇し、
さらにありえない体験をするなど、物語が進むほどに、
どんどん異常な事態に巻き込まれていきます。
結局、どういうジャンルの作品なのか、わからなくなってくるような展開ですが、
最初は不思議な現象に、後半は少しづつ判明する事態に、
引き込まれました。
どの章も油断できない度:★★★★
元不良であるマケイブは、警察署長ではありますが、
ちょっと悪い男、という感じの言い回しと軽い口調で、
物語を語っていきます。
やや口が悪い男性が語る物語が、幻想性を増し、超展開を迎えるのが、
独特の雰囲気で結構好き。
各章のタイトルも、「おれの悩みの種の猿」「雨の中の穴」「朝食にライオンを」などなど、
何じゃそりゃ?と言いたくなるもので、興味をそそられる…。
ジョナサン・キャロルらしい、不思議な展開と、不気味で美しい世界観が満載でした。
奇妙なタイトルの章は、どれも謎と不可思議だらけでハラハラ。
状況を想像しながら、じっくり読むのがおすすめです。
壮大なキャロル作品度:★★★
ニューヨーク州の、保守的な町が舞台ですが、
読み始める前には、想像していなかった、壮大な物語!
「月の骨」や「炎の眠り」といった、ダークファンタジーも、
1つの世界に収まらないスケールの話でしたが、本作も負けていませんでした。
この話の舞台であるクレインズ・ヴューと、と主人公マケイブは、
「蜂の巣にキス」「薪の結婚」にも登場し、
3作合わせて、クレインズ・ヴュー3部作と呼ばれるそう。
本作は、今まで読んできた作品とはジャンルが違うし、
他の2作品とも、雰囲気が異なりました。
「蜂の巣にキス」はサスペンスミステリの雰囲気が強く、
「薪の結婚」は、不気味でじわじわ追い詰められる怖さが…。
1冊でも楽しめるし、3作品すべて読むのも、もちろんおすすめです。
何が起きるのか、予想できないのがジョナサン・キャロル!
ホラー「死者の書」ダークファンタジー「月の骨」とは、
違った魅力を味わいたい人に、おすすめです。