作者名:市川 憂人 創元推理文庫
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、〈ジェリーフィッシュ〉事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することになる。ところが両者への面談後、バラの蔓が壁と窓を覆い、施錠された密室状態の温室から、切断された首が見つかり……。『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!
不気味な日記に、不可解な事件…マリア&漣の活躍ふたたび!
手強い密室トリックが好きな人に、おすすめです。
また騙される度:★★★★
前作の第26回鮎川哲也賞受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」に騙され、
またしても騙されました。
まぁ、騙されたくて読むんですけど(笑)
今作は、虐待から逃げ、研究者の屋敷で保護され住むことになった少年の日記パートと、
捜査する刑事、マリアと漣のパートで進みます。
少年の日記は、放火が疑われる火災現場から見つかったもので、
その内容は、親の虐待に耐えかねて逃げた少年が、
ある一家に助けられるところから始まります。
その一家は、科学者の父と優しい母、賢い女の子の3人で、
何だか少し変わっているけれど、少年の世話を焼いてくれる人たち。
最初喧嘩腰だった少女も、だんだん少年と仲良くなってきて、
ボーイミーツガールでほのぼの?と思っていたら、
物語は急転直下で、恐ろしい展開を見せます!
この、どこまでが真実か分からない日記が謎を呼び、捜査員を悩ませることに。
現代パートは、ジェリーフィッシュ事件の後、大きな事件が回ってこないマリアと漣が、
あるきっかけで、青い薔薇について関わることになり、
ふたたび恐ろしく、かつ不可解な密室殺人事件に巻き込まれていきます。
過去と現在の絡みにも、密室のトリックにも騙されましたが…。
一番えっ⁉と驚いたのが、‟あの人”の正体でしたね。
そんな書き方されたら、まさか○○だなんて思わないじゃない~(汗)
変わらぬコンビ度:★★★
マリアと漣の掛け合いは、健在です。
良かった!
騙されるミステリと同じくらい、
マリアをおちょくる漣を待っていました(笑)
やはりシリーズミステリは、魅力ある相棒がいた方が、断然好きです。
2人に振り回されがちな軍人も、熱心な他署の中年刑事も、みなさん出演!
普段は部下におちょくられがちでも、実は切れ者マリア。
相変わらず冷静で、優秀なサポート役の漣。
作品のクオリティが高いのももちろんですが、
この2人が好きなのも、シリーズを集める理由ですねぇ。
密室の難解度:★★★★★
温室の中の、切断された首。
手足をしっかりと拘束され、目隠しと猿轡をされ倒れていた学生。
閉じた出入口の内側に書かれた、血のメッセージ。
バラの蔓で覆われた、窓。
ドアを開閉したら、血文字がこすれてしまうし、窓を開けたら蔓に痕跡が残る。
うーん、考えても分かりませんでした!
前回は、‟飛行船に乗っていた全員が他殺体なのに、他に誰かがいた形跡がない”という、
全体的に謎だらけのシチュエーションでしたが、
今作は、他にも事件と謎はありますが、建物内の密室殺人がメイン。
…すご~く密室トリックを読んでいる人は、ひょっとしたら当てられるのかなぁ…。
騙されるのが癖になってきた…3作目が待ち遠しい!
密室トリックに、自信のある人。ぜひ、挑戦してみてください!