【ミステリ】薔薇密室|戦争中、古い僧院に身を寄せた青年は、人間と薔薇を融合させるという、信じられない実験を目撃。十数年後、ナチに怯える少女ミルカは、恐ろしい幻覚へと誘われ…。2つの物語が混ざり合うとき、驚きの真実が明らかになる!人間の悲しい業を描く、おぞましくも美しい歴史ミステリ。

作者名:皆川 博子   ハヤカワ文庫JA

第一次大戦下のドイツ・ポーランド国境近く。脱走兵コンラートは古い僧院に身を寄せる。そこでは所有者のホフマン博士が、人間と薔薇を融合させる常軌を逸した実験を行なっていた。コンラートはある思惑のもと、博士に協力を申し出る…。そして十数年後、ナチス・ドイツの弾圧から逃れたポーランド人の少女ミルカが見た、僧院の恐るべき真実とは?戦争と美への欲求という人間の深い業を流麗な筆致で描く歴史ミステリ。

耽美でおぞましい、脱走兵コンラートと薔薇人間ヨリンゲルの物語。

戦争に翻弄される、悲しいポーランド人少女の物語。

2つの物語は、徐々にリンクしていき…読者を混乱させる展開へ!

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退廃的で悪夢的度:★★★★★

物語は、第1次世界大戦の時代を生きる、ドイツ人青年が、

自らの人生を語るパートから始まります。

青年コンラートは、徴兵され戦地に駆り出され、敵の襲撃を受けますが、

若く勇猛な騎馬士官のおかげで、命拾い。

しかし、士官は撃たれてしまい、コンラートは意識を失った彼を連れて脱走、

さまよった末に、古い僧院にたどり着きます。

そこで、彼を待っていたのは、ホフマン博士による狂気の研究でした。

なんと、人間と薔薇を融合させ、

お互いの生存本能によって生き永らえさせるというのです。

そのまま「薔薇の僧院」に居つくコンラートですが、

薔薇園には、すでに博士によって、‟薔薇の若者”にされた存在がいて…。

最初から、とんでもない展開が続いた後、

突然、語り手は、第2次世界大戦に巻き込まれる、

15歳のポーランド人の少女・ミルカに移ります。

恐ろしいけれども、続きがすごい気になるパートが、切り替えられちゃったよ!

とモヤモヤしましたが、

こちらのパートも、ナチスドイツの恐怖と、ミルカと謎の少年の恋が描かれ、

ハラハラハラハラ…面白い。

その後、語り手として、薔薇の若者の失敗作であったはずのヨリンゲルが登場。

ホフマン博士とコンラートはどうなったのか?という謎を残したまま、

ヨリンゲルとミルカの物語は、徐々にリンクしていきます。

読めば読むほど、事情が分かってくるようで、さらに混乱する物語…

そして明らかになる真相と、迎える結末は、意外な余韻を残します。

どこまでが現実?度:★★★★

退廃的なコンラートのパート、

ひたすら翻弄され、混乱していくミルカのパート、

不思議な穏やかさがあるけれど、謎多きヨリンゲルのパート。

コンラートが語る物語は、序盤のみで、

あとはミルカと、ヨリンゲルの物語が綴られますが、

まったく関係がなさそうだった2つの物語は、不思議な繋がりを見せ始めます。

しかし、何だか食い違う部分があり、

登場人物が悪夢的な幻覚に襲われ、自分の正気と記憶を信じられず、

読者も混乱…語られた物語は、どこまでが本物?

退廃的な雰囲気と、悪夢のような幻覚、戦争の緊迫感によって、

この作品の世界観に、引き込まれていきます。

戦争と恋物語度:★★★

僧院のおぞましい話、残酷な戦争の描写があるなかで、

引き立つのが、ミルカと少年ユーリクの、おとぎ話めいた恋物語。

2人の運命がどうなってしまうのかも、気になるところ。

吉川英治文学賞を受賞した、同じく戦時中のドイツを描く「死の泉」も、

美を求める人間の狂気とともに、

登場人物の愛と執着を、丁寧に描いており、こちらもおすすめです。

歴史ミステリ+美と狂気+人間ドラマに惹かれる人は、ぜひ。

薔薇をめぐる狂気の物語は、どこまでが真実なのか?

退廃的な雰囲気の強い、歴史ミステリが好きな人におすすめです。

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