作者名:皆川 博子 ハヤカワ文庫JA
18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が……解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくときに哀しい不可能犯罪に挑む。
18世紀ロンドンの、偏見に晒される解剖学教室。
突如現れた死体の謎を解き、教室を守れるのか?
個性的な生徒度:★★★★★
解剖学のことしか頭にないダニエル先生の生徒たちは、とても個性的です。
饒舌クラレンス、肥満体ベン、骨皮アル、
容姿端麗エド、天才素描画家ナイジェル。
クラレンスとベンとアルは家族がいますが、エドとナイジェルは孤児。
境遇は違っても、解剖学の地位向上のために、一丸になって頑張っていたところ、
教室の隠し戸から、突然2体の死体が!
教室のため、先生のため、犯人捜しを始める生徒たち。
しかし、エドとナイジェルの2人は、何かを隠しているようで…。
賑やかなメンバーのおかげで、重い作品であることが多い皆川ミステリの中では、
比較的明るい雰囲気です。
かといって、ライトなミステリでは、決してないんですけれど。
教室で飼ってる、犬のチャーリーが不憫で不憫で(泣)
2つの物語のリンク度:★★★
死体の捜査をする、解剖学教室のメンバー&治安判事たちのパートと、
詩人を志しロンドンに出てきた少年・ネイサンのパートで語られます。
ネイサンは、ロンドンに来てから、いくつかのトラブルに巻き込まれ…次第に危うい立場に。
エドとナイジェルと友達になったり、殺されたある人物と知り合っていたり…。
殺人事件に、密接にかかわってしまいます。
四肢を切断された死体はネイサンだと確認されるのですが、
なぜそんな恐ろしい目にあったのか…。
ネイサンがはまった罠が、徐々に明かされていきます。
交互に語られる物語が、最後の最後で1つになるとき、
騙されていたことに気づきます!
人間の裏の顔度:★★★★★
他にも、いろいろな人物がでますが…。
実は、狡猾で抜け目ない性格であった人や、
とんでもない悪党であった人など、
裏の顔が明かされるたびに、うわっとなりました。
第1印象で、思い込んではいけないですねぇ。
登場人物の本性が明らかになって、ああ驚いたなぁと思っていたら、
真相で、もっと驚かされました。
前日譚の短編も入った、大満足の傑作ミステリ!
気に入った方は、ぜひ続編の「アルモニカ・ディアボリカ」もどうぞ。