作者名:アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫
実直さが評判の離婚専門の弁護士が殺害された。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた数字“182″。被害者が殺される直前に残した謎の言葉。脚本を手がけた『刑事フォイル』の撮影に立ち会っていたわたし、ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンから、再び奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて――。年末ミステリランキングを完全制覇した『メインテーマは殺人』に並ぶ、シリーズ第二弾! 驚嘆確実、完全無比の犯人当てミステリ。
今作も、著者ホロヴィッツとともに翻弄されました!
犯人当ての材料はそろっているはずなのに、ホーソーンのようにはいかないものです…。
変わらぬ正統派ミステリ度:★★★★★
前作「メインテーマは殺人」では、自身の葬儀の手配をした老婦人が、その日のうちに殺されてしまった事件を、
元刑事のホーソーンと、作家ホロヴィッツが捜査をするという物語でした。
ホーソーンがなぜホロヴィッツと組んでいるかというと、事件の正確な本を書いてほしいから。
本作の冒頭では、書いたけれども、まだ「メインテーマは殺人」が出版されておらず、
ホロヴィッツは、変わらず執筆に、ドラマの脚本づくりに忙しい日々を送っているのが描かれています。
そこに、事件が起きたとホーソーンが、傍若無人に飛び込んできて、物語がスタート。
潔癖なほどに実直な、有名な離婚弁護士リチャードが豪邸で殺害されたのです。
ワイン瓶で殴られ刺され、壁にはペンキで‟182”という謎の数字が!
彼に、離婚裁判で激怒して、ワインをかけて脅した女性作家や、
彼女と無事に離婚できるようにリチャードに依頼した、不動産開発業者の元夫。
リチャードが若いころに起きた、洞窟探検での死亡事故の関係者、
最初から嘘をついていると指摘された、パートナーの男性などなど。
今回も、何かを隠していそうな登場人物がたくさん出てきます。
そして、捜査を始めてから、死者がどうやら1人ではないと判明し…。
相変わらず秘密主義で、ときに人でなしなホーソーンと、
前作以上に振り回されまくる(今回、本気で同情しました)、作者ホロヴィッツ。
最後の謎解きで、「言われてみればそうだった!」と気づくヒントの開示と、
もうちょっとホロヴィッツに内面を見せてもいいのに!とやきもきする、ホーソーンの偏屈ぶり、
必要なことは書かれているのに、真相は結局ホーソーン任せになる本格ミステリ、といった点は、
変わらず素晴らしいです。
ミステリマニアを刺激する度:★★★★
前作同様、真相を当てられず、「気づけなかったけど、面白かった、快感!」となりました。
ミステリのクオリティは、2作品とも素晴らしいと思います。
どっちがより驚いたかと聞かれたら、個人的には「メインテーマは殺人」かな?
今作は、本当にヒントは出そろっているから、頑張って犯人と真相を当ててごらん、
と言っているように、感じられたのです。
ホーソーンも、実に意味ありげなことを言って、ホロヴィッツは今回こそ犯人を当てる!と意気込むので、
読者もつられる…私は分かりませんでしたが。
犯人当てミステリ大好き、正統派ミステリマニアは、燃えるんじゃないでしょうか!
気になる2人の関係度:★★★
前作で、元刑事ダニエル・ホーソーンの変わり者っぷりは、
ホロヴィッツと組んで捜査をしているうちに、少しずつ緩和され、
そして続編となる今作では、2人はすっかりコンビらしく…なってない(笑)
ホーソーンのプライベートの描写は入るのですが、謎が謎を呼ぶ感じで、
過去に何があったのか、元からこういう性格だったのか、などなど分からない点は変わらず多いです。
今回も、容赦なくホロヴィッツに心労をかけ、ストレスを提供し…。
でも、いざコンビ解消という話が出ると、動揺してしまうところは憎めないので、
コンビの絆がもっと育まれていくといいな…と思っちゃう。3作目が待ち遠しい!
要注目作家の、伏線たっぷり犯人当てミステリふたたび!
自信のある方は、今作もぜひチャレンジを!