【ミステリ】わたしたちが孤児だったころ|上海租界で暮らしていたクリストファー。10歳の彼を残して、両親が相次いで失踪した…当時、一体何が起きたのか?探偵になった彼は真相解明に臨むため、戦乱の上海へ!カズオ・イシグロが描く、孤児から名探偵になった青年の、魂の冒険譚!

作者名:カズオ・イシグロ   ハヤカワepi文庫

上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは十歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。ロンドンに帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し社交界でも名声を得た彼は、戦火にまみれる上海へと舞い戻るが……現代イギリス最高の作家が渾身の力で描く記憶と過去をめぐる至高の冒険譚。

消えた両親を探すため、名探偵として力をつけた青年。

情勢不安定な上海で、自らの過去の謎に挑む!

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孤児としての生きづらさ度:★★★★★

主人公の過去のパートと、探偵となった現在のパートで、

孤児であったクリストファーの人生が語られていきます。

主人公・クリストファーは、10歳までは、上海租界で両親と裕福に暮らしていました。

優しい両親、しょっちゅう遊ぶお隣の男の子。

少年期のパートは、そういった幸せそうな雰囲気で語られるのですが、

アヘン反対運動が激しくなるにつれて、不穏な空気がじわじわと…!

ついにある日、父が失踪してしまいます。

その後、クリストファーの留守中に、母も行方不明に。

この出来事が、彼にいかなる影響を与えたことか…。

孤児になったクリストファーは、イギリスで成長し、探偵を志すようになります。

読んでいて感じるのは、クリストファーの、肩ひじを張った雰囲気。

物腰は柔らかく紳士ですが、気を許さないような…。

気になる女性とも、なかなか。(相手がまた個性的で、手強いのもありますが)

自分に厳しく、至らなかった点は、きっちり反省し戒めます。

もちろん大人としては至極正しいのですが、自分を律して目標に向かうのが、生きがいみたい。

不安定な立場で育ったゆえなのかなと、感じてしまいました。

文章から、クリストファーの考え方や心情を読み取れる、

丁寧に描かれた物語です。

過去の真相を探るミステリとしても、面白い。

特殊な子ども時代度:★★★

過去のパートも、多く語られます。

事件前の両親のいざこざや、美しかった母の話なども出てきますが、

隣人の子・アキラとの、少年同士らしいエピソードが、印象深いですね。

租界で暮らす外国人の子、という特殊な立場。

子どもなりの見栄の張り合い、精一杯の冒険。

租界の子ども時代は、ときに魅力的に、ときに不穏に描かれます。

人生の核になる時期に、両親を失い、祖国で暮らすことになった孤児。

クリストファーが、どうけじめをつけて前に進み、

‟大人”になるのかが、見どころだと思います。

意外な真相と、けじめ度:★★★★

過去の真相を明らかにするため、クリストファーは上海に戻ります。

おりしも、第2次世界大戦前。

日本軍の攻撃、共産主義者の情報提供者・イエロースネークにまつわる事件。

上海は危険な状態です。

やっと過去の事件のカギを探し出したと思ったら、日本軍の戦闘に巻き込まれます。

予期せぬ再会を果たし、真実にたどり着くのですが、これがまた残酷(泣)

孤児が大人になったとき、自分の人生をどう定義するのか?

考えさせられる作品でした!

読後に、ずっしりとくるタイトル!

ミステリのある一代記が読みたい人に、おすすめです。

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