竹書房文庫
誇り高く孤独を愛するが、寂しさを感じたとき彼らはそばにいてくれる。甘えるが媚びず、気まぐれだが頼りになる相棒。そんな不思議な生き物の名は猫―。マシュマロを焼く天才猫が登場するコイストラ「パフ」、宇宙船に乗せられた“船猫”が活躍するナイ「宇宙に猫パンチ」、傑作の誉れ高いライバー「影の船」など、愛すべき個性豊かな10匹の猫たちが宇宙狭しと跳び回る。名アンソロジストがすべての猫好きとSFファンに贈る、猫SFアンソロジーの決定版!地上でも宇宙でも、やっぱり猫は猫なのだ。
気まぐれでわがままで、ときに少し怖い…でも、たまらなく魅力的な猫が10匹!
SF作品としても、もちろん面白いです。
色々な魅力度:★★★★
猫が活躍する、猫の魅力がたっぷりのSF短編小説を、
地上編と宇宙編に分けて、各5作品ずつ収録した、短編集です。
どの話も面白いのですが、すべて猫を扱った作品なのに、ジャンルや設定・展開などが、全然かぶっていないのが驚き。
ほんわかする話やコミカルな話、泣ける話も少し怖い話も、哲学的な話もある!
どの話も面白いし、どの作品の猫もとにかく可愛いです。
最初の「パフ」からして、インパクト大の物語。
娘が家の中でずっと飼えるように、遺伝子操作で子猫時代が長引く猫・パフを創り上げた父親ですが、
パフの驚異的な頭脳が明らかになり、驚かされます。
自分で串に刺したマシュマロを焼いちゃう、恐ろしい子!
ある出来事をきっかけに、天才パフは、何やらこっそり計画を立てているようで…。
いきなりこういう話がきたか…と驚きました。これは印象に残る!
2つ目の「ピネロピへの贈りもの」は、猫を飼っているおばあさんが、不思議な少年に出会う話です。
「たんぽぽ娘」作者の作品で、猫ピネロピも物語もキュート!
神秘的な「化身」と、ブラックで滑稽な「ヘリックス・ザ・キャット」も、それぞれ個性的な作品でした。
SFとして傑作度:★★★★
地上編の作品の中で、個人的にいちばん好きなのが「ベンジャミンの治癒」。
16歳のときに、老猫ベンジャミンに迫る死が耐えられなかったジェフリーは祈り、
ベンジャミンが4歳の猫に若返って元気になるという、奇跡が起きたのです。
しかもベンジャミンは、その後も4歳のままで年を取らず、ジェフリーと会話ができるように!
しかし、ジェフリーが運命の女性と出会ったことにより、2人と1匹の運命は意外な方向へ。
飼い主と飼い猫の絆が、胸に迫る素敵な物語でした。
宇宙編の中でお気に入りは、「宇宙に猫パンチ」。
もうタイトルからして、猫好き殺し!
最新技術の宇宙船のテスト航行クルーに選ばれた、3人の男女と猫ケルヴィン。
賢すぎる船に戸惑いながらも、順調に進んでいたある日、絶体絶命のトラブルに遭遇します。
ここからの展開が、とにかくたまらないです!
猫が主人公かつ語り手の「共謀者たち」は、ハードSFチックで、やや哲学的かも。
生物の精神の進化から起きる、脱走計画の話で、最後の展開が印象に残ります。
かぎりなく猫っぽいエイリアン・カンムリネコが登場するということで、収録されているのが「チックタックとわたし」。
謎の生命体、異星の未来都市、超能力など、SF色が強い短編で、なかなか緊迫の展開を見せます。
天才少女の冒険小説としても、面白い作品。
とにかく可愛い度:★★★★★
とにかく猫が、猫が可愛いです!
普通の猫らしく可愛らしいピネロピ、よきパートナーたるベンジャミン、
キュートな猫パンチと気ままさがたまらないケルヴィン…みんな自由でお茶目で魅力的です。
SFのようなファンタジーのような、謎の展開が続く「影の船」に登場する、
世話焼きな猫キムの、舌足らずな喋り方が特に可愛い!
1つ1つが読みごたえのあるSF短編なので、SF好きはもちろん、
猫好きはぜひ、じっくり悶絶しながら読んでみてください。
どうしてこの生き物は、こう魅力的なのか…!
素敵なタイトルに、素敵な物語がつまった短編集です。