
作者名:深木 章子 (みき あきこ) 角川文庫
とある弁護士事務所に勤める花織は、先生に寄せられる依頼を盗み聞きしては、“おしゃべりする猫”のスコティと噂話に花を咲かせていた。ある日、愛らしく気高くちょっと生意気なスコティが、推理合戦を仕掛けてくる。「もしいま先生が殺されて、金庫の中身が盗まれたら、犯人は誰だと思う?」。金庫に入っているのは、5カラットのダイヤ、資産家の遺言書、失踪人の詫び状、12通の不渡り手形。怪しい依頼人たちを容疑者に、あれこれと妄想を膨らますふたり(1人と1匹)だったが、なぜか事件が本当に起きてしまい―。現実の事件と、謎解きに興じる“しゃべる猫”の真実は?ミステリ界注目の気鋭による、猫愛あふれる本格推理。
事件も真相も苦いものだけれど、とにかくスコティは可愛い♥
猫好きには、たまらないミステリです!
おしゃべり猫とか最高!度:★★★★★
老齢の弁護士がゆったりと営んでいる事務所で、唯一のスタッフとして働く花織。
今まで職場で大変な思いをしてきたけれど、今のゆったりした環境は最高。
なにせ、この職場には、美しいスコティッシュフォールドのスコティがいるから!
しかもこのスコティ、なんとおしゃべりする猫!
その秘密を知っているのは花織だけで、2人きりのときは楽しく雑談しています。
花織はミステリマニアですが、スコティもミステリ好き猫。
自分でミステリを作って、花織が解けるかどうか、腕試しをしてきます。
ちなみにスコティが考えた猫ミステリ、私は1つも分かりませんでした…。
スコティ、恐るべし。
とにかく、ひたすらスコティが可愛い作品です!
しゃべり方も仕草も、まさに猫という性格もたまらぬ…。
読んでいる間、ちょくちょく悶絶しました(笑)
ただし、アットホームな雰囲気のコージーミステリを貫くかというと、
そういうわけでもなく…ゆめゆめ油断なされぬよう!本格ミステリ好きも楽しめます。
作者は元弁護士で、「鬼畜の家」「衣更月家の一族」といった、おっそろしいミステリが有名な人。
「螺旋の底」という作品は読んだのですが、あれもドロドロだったなぁ。
この作品も、明るいテイストとはいえ、可愛いだけの小説ではないのですよ…。
ミステリマニアのための作品度:★★★
いろいろな事情の依頼者がきて、各家庭の問題が2人(1人と1匹)の前に提示されます。
資産家の、仲の悪い親族に対する遺言状騒動やら、
身勝手な妻と浮気相手と、夫の泥沼状況相談やら、皆さん訳ありで、もめるもめる。
怪しい依頼人が続き、事務所の金庫の中には、人によっては盗んででも欲しいものがしまわれ、
しかし老先生は、警戒心が薄く、戸締りがいい加減。
この状況にスコティは触発されたのか、先生が殺されて金庫の中身が盗まれたら犯人は誰か?と、
花織に問題を出します。
ミステリマニアの花織は、この問題に燃え、2人の雑談は、本格的な推理合戦へ!
ここのやりとりは、ミステリ好きは楽しめると思います。
しかし、事件は空想だけではなく、現実にも起こってしまい?
第1部の後半から、ちょっと‟ん?”という雰囲気になるのですが、
第1部と第2部では、だいぶ物語の様相が変わります。そういうことかい!
こ、こんな話だったとは…。
スコティの魅力に、すっかり油断させられていました。
だって集中しようとしても、いちいち可愛いから、深く考えずに読んじゃうんですもの(笑)
第2部の衝撃度:★★★★
第2部では語り手が交代し、雰囲気もがらりと変わりますが、
会話をしながらの鋭い推理は続きます。
第1部の雰囲気が好きだけれど、第2部の謎解きも面白い!
ミスリードされていたというか、違う物語を楽しませてもらっていた、というか。
最後の2ページの余韻が、何とも言えません。
真相がわかったうえで、再読すると、もはや違う作品に思えてしまう!
ミステリとしての質の高さと、スコティの魅力を味わえる作品でした。
猫好きを、楽しませるだけの小説ではない…。
正統派ミステリ好きも、楽しめるはず!