作者名:ジェラルド・カーシュ 角川文庫
ビアスの失踪という米文学史上最大のミステリを題材に不気味なファンタジーを創造、エドガー賞に輝いた「壜の中の手記」、無人島で発見された奇怪な白骨に秘められた哀しくも恐ろしい愛の物語「豚の島の女王」など途方もない奇想とねじれたユーモアに満ちた語り/騙りの天才カーシュの異色短篇集。「凍れる美女」「壁のない部屋で」の新訳2篇、「狂える花」ロング・ヴァージョンを収録した新編集版。
奇想の名手の傑作が12編と、読み応えあり!
ダークかつひねりの利いた物語によって、奇妙な世界へ…。
味わい深い傑作短編度:★★★★★
ジェラルド・カーシュが、1938年から1968年までに書いた作品が、
12編収められています。
表題作の「壜の中の手記」は、アメリカの有名な作家アンブローズ・ビアスの、
失踪事件を題材に描かれた作品で、MWA賞最優秀短編賞受賞作。
壜の中に収められていた手記には、彼が失踪した際の、
驚きの体験が書かれており…。
夢のような優雅なシーンに隠されたものが、最後に明らかになり、驚かされます。
1つ目の「豚の島の女王」は、無人島に流れ着いたサーカス団員の、
最期の日々の物語。
恐ろしく哀しい話なのに、どこか美しいような、不思議な魅力がありました。
アマゾン河での妙な話を聞かせる男が出てくる「黄金の河」と、
奇怪な生き物に出会った男の恐怖を描く「骨のない人間」は、発想が面白い!
特に、「骨のない人間」のラストは秀逸です。
恐ろしい刑務所で淡々と生きる男の、おかしな人生譚「ねじくれた骨」。
不吉な予感を漂わせる、読み応えのある物語です。
「ブライトンの怪物」は、1745年にある村で見つかった、人魚のような怪物の話。
全身に異常な模様が描かれ、言葉が通じない謎の男の正体は…。
予想外の真相を、当てられた人は本当にすごい。
個人的に、いちばん楽しめました。
死の商人の人生を描いた、代表作の1つでもある「死こそわが同士」は、
おぞましくも切ない話。
インパクトがある、心に残る短編です。
このほかの話も、ひねりがきいていて楽しめました。
SFからホラーまで度:★★★
物語が進むにつれて、どんどん恐ろしい事態に陥っていく話。
切なく悲しい余韻を残す話。
後半に意外な真相が明らかになる、SF要素もある話…などなど、
それぞれの短編に特色があり、空いている時間に、1話ずつじっくり楽しめます。
「凍れる美女」と「壁のない部屋で」は、かなり短めの作品で、
他の短編も、20~40ページほど。読みやすいです。
奇妙な物語好きにおすすめ度:★★★★
奇想天外かつ騙される話を、書き続けた作家の短編集。
読んでいるうちに、現実のはずなのに、
不気味でおどろおどろしく、どこか魅力的な世界に引き込まれました。
ものすごく怖いとかハラハラする、というよりも、
味がある、という表現の方がしっくりくるような、
そんな物語が収録されています。
1つ1つの物語に、奇妙で魅力的な世界が詰まっています。
最初から最後まで楽しめる短編集!