【短編集】火葬国風景|奇妙な味わいの物語に、ハマってしまう…。死んだはずの男とすれ違うことで始まる表題作に、夢の中の殺人が現実になる「不思議なる空間断層」、国民を洗脳する国家の末路を描く「十八時の音楽浴」などなど、珠玉の傑作が集められた短編集!

作者名:海野 十三   創元推理文庫

銭湯で起きた殺人の謎を解くデビュー作の本格ミステリ「電気風呂の怪死事件」。男が死んだはずの友人とすれ違ったことに端を発する、幻想的な冒険譚「火葬国風景」。国民を洗脳・支配する独裁国が辿った、皮肉な末路を描く歴史的名作「十八時の音楽浴」など11編に、エッセイを収録。日本SFの先駆者にして、唯一無二の科学的奇想に満ちた作品を描いた著者の真髄を示す、傑作短編集。

斬新な発想と驚きの展開に満ちた、SF・幻想・ミステリの短編集。

摩訶不思議で恐ろしいけれど、魅力的な世界を覗いてみては?

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斬新な発想度:★★★★★

推理小説も入っていますが、SF・ホラー・幻想の要素が強い作品が多いです。

とにかく独創的な物語が特徴的で、その発想が面白い!

「不思議なる空間断層」は、夢の話という不確かで危うい雰囲気が生かされている作品でした。

奇妙な夢を見て、その話をするのが大好きな語り手の友人・友枝八郎。

彼はこのごろ不思議な部屋で、いかつい男となった自分が、

殺人を犯してしまう夢を見ると言います。

2回目に見た時も人を殺してしまうのですが、‟夢”は意外な方向に展開し…。

夢と現実の混同という、割とよくあるテーマでも、最後のひねりが合って秀逸!

表題作「火葬国風景」は、街で死んだはずの知人を目撃してしまった男が、

恐ろしい冒険をする羽目になり、驚きの真実に到達するのですが、

これまた、どういうジャンルになるんだろう?という不思議で印象的な話。

奇想天外で好き。

破壊された地上を捨て、人類が地下で暮らすようになったSF小説「十八時の音楽浴」が、

個人的にいちばん楽しめました。

国民を模範的な人間にするため、

天才コハク博士の発明した音楽浴を受けることが義務である王国。

自分勝手で考えの浅い人物が暴走したために、全国民が一気に崩壊へと突き進む展開が、

皮肉たっぷり描かれていて、ひどい話なんだけれど、う~ん面白い。

最後に収録されている「三人の双生児」は、タイトルからして⁇⁇で、

どういうこと?と物語に引き込まれます。

内容もトリを飾るにふさわしいインパクトというか…

幼少期に生き別れた双子の片割れを探す女性が、何とも奇妙な事態に翻弄され続け、

うえ~っという真相の後の、彼女の行動が心に残る作品でした。

おぞましく魅力的度:★★★★

基本的に、人間のおぞましい部分や、科学の恐怖を描いていますが、

読んでいるうちに、何だか癖になってくる魅力があります。

「恐しき通夜」は、本書でも人間のおぞましさが際立っている作品で、

ちょっと忘れられなさそう…。

3人の男性が、暇つぶしに始めたそれぞれの話の結末が、

げっ!としか言えない結末を招きます。

「生きている腸(はらわた)」は、タイトルからしてアレですが、

裏切らない不気味な内容!

ただ、ちょっと滑稽な感じがするし、怖さ<不思議という雰囲気で割と好きかも。

ミステリである「電気風呂の怪死事件」「階段」「盲光線事件」も、

面白いのですが、どこか現実離れしていて、普通のミステリとは何か違う…。

独特の妖しい雰囲気が好きになったので、他の作品にも手を出していこうと思います。

お得な短編集度:★★★

目次に書かれているのは11作品ですが、

「蠅」には蠅にまつわる話が7話、「顔」には顔にまつわる話が4話収録されているので、

実質的にはさらに楽しめます。

特に「蠅」にまつわる話は、どれも短いながらインパクトがあって、面白い!

ショートショートも楽しめて、お得なのです。

ミステリ・SF・幻想的なホラーなど、さまざまな作品が読めますし、

1949年に亡くなった作家さんなので昔の作品になるのですが、読みやすく、

発想が斬新なので今読んでも楽しい!おすすめの作品集です。

路地裏の迷路に迷い込んだかのような、奇々怪々な物語たち!

奇妙な話、意表を突く話が好きな人は、ぜひ!

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