【ファンタジー】闇の虹水晶|人の感情から宝石を創り出す青年、創石師ナイトゥル。一族を惨殺した男に仕え、空虚な心を抱えた彼は、黒い水晶と出会う。水晶が見せる幻により、少しずつ失った感情を取り戻していくナイトゥルだったが、戦乱が再び迫っており…。「夜の写本師」作者による、喪失と再生の壮大なファンタジー!

作者名:乾石 智子   創元推理文庫

その力、使えばおのれが滅び、使わねば国が滅びよう。人の感情から石を創るたぐい稀な才をもつが故に、故国を滅ぼし家族を殺した憎い敵に仕えることになった創石師ナイトゥル。生きる気力をなくし、言われるまま創石師の仕事をしていた彼に、ある日怪我人の傷から取り出した黒い水晶が見知らぬ国の幻を見せた。“オーリエラントの魔道師”シリーズで人気の著者が描く壮大な物語。

剣と魔術あり、竜と戦乱あり、内容はがっつり!

読みやすいボリュームで、シリーズものではない、正統派ファンタジーです。

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王道ファンタジー度:★★★★

主人公の青年ナイトゥルは、人の感情から宝石を取り出すことが出来る、創石師と言われる存在。

彼は、アルビル族の族長の血筋で、容姿・弓の腕前・創石師の才に恵まれ、

善良な性格で、一族に大切にされる存在でした。

しかし、‟塩の魔女”と関わってから、運命が狂いだし、

ついには攻め込んできた下タフ族に、国を滅ぼされ、

家族も何もかも失ってしまうのです。

しかし彼自身は、その才により死ぬことも許されず、

下タフ族の族長で仇のオーシィンに、飼いならされる日々。

空虚な日々を送り、心を許せるのは、面倒を見てくれる少女ドリューのみ。

ところがある出来事がきっかけで、謎の黒い水晶に出会い、

異国の若い王子の幻を見るように。

それと同時期に、再び戦乱の気配が近づいてくるのでした。

戦火に巻き込まれ、魔物や竜と関わり、黒水晶の幻に心を動かされるナイトゥル。

彼がたどり着く結末とは…

半分以上読んだあたりから、ハラハラして止まらなくなりました!

王道のファンタジー設定に加え、関わる人間との微妙な関係、

過去の傷との折り合いなどが描かれています。

国を滅ぼしたオーシィンとの関係も、ただの仇と家来、という感じでもなく、

ナイトゥル自身の変化も、憎しみで人が変わったという話ではなく、

異国の王子もただの侵略者、というわけではない…。

単純に表現できない関係性が複雑で、ゆえに展開が読めない!

ファンタジーの質が高いのもそうですけど、

何とも微妙で複雑な感情を描くのが、上手い作家さんで、

登場人物についつい感情移入してしまいます。

魔法と戦の物語度:★★★★★

デビュー作で、‟オーリエラントの魔道士”シリーズ第1作目の「夜の写本師」。

シリーズものではない、著者渾身の大作である「滅びの鐘」。

今のところ、乾石ファンタジーは、この2作と本書しか読めていないのですが、

この「闇の虹水晶」は、2作品の要素が、ちょうど半々くらいの作品だと感じました。

「夜の写本師」で出てくる、不思議な力をもつ主人公と、特別な石。

「滅びの鐘」で描かれる、民族同士の容赦ない戦いと、止まらない憎しみの連鎖。

本作では、主人公が創石師という、人の感情から宝石を取り出す、

不思議で特別な存在であり、

物語では、多くの民族が争い、領土を広げようとします。

何となく雰囲気としては、前述の2作品が混ざった感じ。

加えて、竜や魔女、有翼獅子(グリフォリス)なども出てきて、

ファンタジー感は満載!

変わらぬ正統派ファンタジー作品で、楽しめました。

短いけれども濃厚度:★★★

がっつり、濃厚なファンタジーを読んだなぁ…。

と読後思ったのですが、300ページに満たない作品だったんですよね。

内容がつまっているし、求めるファンタジー要素がたくさん入っているし、

多くの民族・登場人物が出てくるし、世界観がしっかりしているしで、

なかなか充足感があります。

単発作品でシリーズものではなく、

正統派で内容盛りだくさんで、

「滅びの鐘」よりも、短く読みやすい作品。

乾石作品に手を出してみたい、久々にファンタジーを読みたい、

といった人に、おすすめです。

美しい宝石と、恐ろしい戦乱。たくましい人間と、あさましい人間。

生きる力を失いつつある青年に、希望を取り戻させるものとは?

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