作者名:田中 啓文(ひろふみ) 河出文庫
時に、二一九五年、日本は倒産しました――すべてのSFファンに捧ぐ「ガラスの地球を救え!」、最後の地球人がイルカと出会う表題作他、笑いと脱力、まさかの感動に満ちた十二の名短篇。日本よ、これが小説だ。
オチがよめないブラックユーモアを求める人は、これでしょう!
何も考えず、ひたすら楽しみたい笑いたい!
全力でネタ突っ込む度:★★★★
有名人も有名作品も、容赦なくネタに使われていて、
いいのかなこれ…と思ってしまうくらい。
でも話がうまいので、もう笑うしかない!そんな短編集です。
特にジョークが効いているのが、
・倒産した日本のあるものを使って、地球を救おうとする「ガラスの地球を救え!」
・本能寺の変の、なんじゃそりゃという真相(?)「本能寺の大変」
・ゾンビパニックの意外な結末「屍者の定食」
・有名漫画もじりまくりで、とんでもない展開になる「血の汗流せ」
です。特に「血の汗流せ」の漢字のダジャレが(笑)
「ガラスの地球を救え!」で、なかなか攻めた話だなぁと思い、
「本能寺の大変」で、分かった!終始このテンションなんだな⁉と驚きつつも笑い、
「屍者の定食」で爆笑。
「血の汗流せ」では、元ネタのいじりまくりにヒヤヒヤしつつも、再び爆笑しました。
すべての話が刺激的度:★★★★★
ジョークが効いているのが多いですが、
「あの言葉」「歌姫のくちびる」はずっしりくる作品。
それぞれ、時間旅行で過去の運命の瞬間の真相を知ろうとする話、
歌姫同士の争いがグロテスクな奇跡を起こす話です。
とくに、「歌姫のくちびる」はインパクト強かった…。
グロテスクと幻想が入り混じる強烈さは、ちょっと忘れられなさそう。
表題作の「イルカは笑う」は、イルカと人の物語にどんどん引き込まれていったら、
あらっという結末でした。
「みんな俺であれ」は、星新一チックなSFショート作品で、
「悟りの化け物」もSFの良作。何とも奇想天外な話でした。
発想がキテレツで素晴らしい度:★★★★★
「集団自殺と百二十億頭のイノシシ」は、
タイトルからしてなんじゃこりゃですが、内容もすごいです。
設定もそうですが、よくこの展開にいくな、ともう…
唖然としつつも笑いが…。
斬新としか、言いようがない(笑)
「まごころを君に」と、「あるいはマンボウでいっぱいの海」は、SFの落語ですねぇ。
こうしてタイトル並べてみると、インパクトがすごいな!
とにかくどれも、いろんな意味で心に残ります。
この作品が楽しめたら、「地獄八景」もおすすめ。
とにかく退屈しないです!
河出文庫の田中さん作品は、表紙イラストが素敵~。