作者名:田中 啓文 河出文庫
怪獣惑星で発生した人気怪獣の密室殺人。罪を犯すことが不可能な天国惑星で起きた連続殺人。全住民が脚本どおりの生活をおくる演劇惑星で生じた劇中殺人…極秘に事件を解決するために招かれるは、宇宙探偵ノーグレイ!名探偵は五度死ぬ?奇想天外な結末が待つ、宇宙ミステリ作品集。
怪獣惑星、天国惑星、芝居惑星…どこでも事件は起きるもの!
そこに姿を見せるのは、報われなさすぎる名探偵・ノーグレイ!
この惑星でしか起こりえない事件度:★★★★★
ある惑星で事件が起き、そのたび呼び出される探偵・ノーグレイ。
彼が訪れた5つの惑星で起きる、奇々怪々な事件が収録されている、連作短編集です。
ゴジラそっくりの怪獣が人気の、怪獣テーマパークがある「怪獣惑星キンゴジ」。
天使(?)が飛び、厳しい審査で選ばれた住人が、
規則通りに穏やかに暮らす「天国惑星パライゾ」。
決められた人数しか住めないけれど、死んでも生まれ変わる、
ただし脱出不可の「輪廻惑星テンショウ」。
狂気に陥った王が支配し、住民は監視され、
いつでも強制的に芝居をさせられる「芝居惑星エンゲッキ」。
大きな猿が、いたるところで幻のように目撃されるようになった「猿の惑星チキュウ」。
どの惑星も、訪れたノーグレイが唖然とするような、奇妙な星です。
その星独自の生態系があり、法律があり、逆らえない権力者がいて、
探偵に明かされない秘密もいっぱい!
というか、どんな生物がいても、非人道的な法律があっても、
訳の分からない超常現象とか起きちゃっても、
‟あ、この星では普通のことなので”で片づける住民が相手だから…
探偵、そもそも捜査できるのか(汗)
多くのミステリのなかで、間違いなく、悲惨な目に合っている探偵として、
かなり上位に入ります!
個性派SFミステリ度:★★★
はっきり言って、なんでもありの異星ものだから、
逆に、納得のいく事件の顛末を作るのが、大変そう。
どんな惑星でも創造できる分、書き手の難易度が上がる気がしますが、
どの話も、ちゃんと面白いSFミステリになっているのが、すごい!
まぁ、どの話も、ぶっ飛んだ結末になっているので、
「これ、ミステリだっけ?SFだっけ?世にも奇妙な物語だっけ?」と、
たまに混乱しないこともないですが(笑)
各惑星を楽しめる度:★★★★
事件が起きる惑星の、設定が面白い!事件が面白い!
いちばん好きなのは、「怪獣惑星」で起きた、人気怪獣の密室殺人。
色々な怪獣と、彼らの習性を活かした謎解きが、ツボにはまりました。
実は、結構恐ろしい話なんですがね…。
「輪廻惑星」の犯人が、いちばん何だそりゃ!でした。
この話は、惑星自体が何だこりゃでしたけど(汗)
奇妙な生き物と、とんでもない惑星の法則に加え、
幽霊まで出てきちゃうし…カオスで奇想天外な展開でした。
ここに住みたくはないけれど、この話はお気に入りです。
「天国惑星」は、どんどん話が怪しい方向に。
うさん臭いユートピアという、たまに見る設定でも、こんな展開は中々ないでしょう。
とんだ天国のとんだ話!
「芝居惑星」は、この中で、一番住みたくないかもしれません。
惑星にも、犯人にも、ここでの暮らしにも、ゾ~っとしました。
そもそも、ノーグレイは、何故さまざまな星で、あんな目に合う羽目になったのか。
「猿の惑星」で、最後の謎解きが!
そして、母星でも、案の定ろくな目に合わない主人公なのでした…(泣)
1つでも、真相が当てられたら、すごすぎる!
異星SFが好きな方、変わった異星探偵譚はいかがですか?