作者名:西澤 保彦 創元推理文庫
白昼、自宅で新聞紙を鷲掴みにして死んでいた男の身に何が起こったのか―。音無美紀警部のぬいぐるみへの偏愛と、事件の対比が秀逸な、犯人当てミステリ「お弁当ぐるぐる」。不可能犯罪を劇的に描いた表題作、都筑道夫の“物部太郎シリーズ”のパスティーシュ「墓標の庭」など、バラエティー豊かな五編を収録。意外な展開へ読者を誘う、入魂の傑作推理短編集。
犯人当てを楽しみ、意外な結末に驚愕し、あまりの動機に唖然とする。
短編ミステリの楽しさが、詰まっています!
良作のミステリぞろい度:★★★★
最初に収録されているのは、ぬいぐるみ警部シリーズの、
音無警部と部下たちが謎に挑む、「お弁当ぐるぐる」。
リストラされてから、妻の不味い弁当に悩んでいた男性が、
新聞紙を持ったまま殺されていて、蔵の古美術品が盗まれたらしい。
しかし、大量の盗難に関わらず、まったく目撃情報がなく…。
ミステリファンの方は、ぜひ犯人当てにチャレンジしてみてください。
次の話「墓標の庭」では、父が死ぬ前に衝撃的な告白をし、
その後、女の幽霊を見るようになった女性が、探偵に調査を依頼します。
とんだ騒ぎと思われたけれど、その後意外過ぎる真相が明らかに!
なかなかのインパクトでした。
3番目の「カモとネギは鍋のなか」は、清楚で可憐な先輩に片思いしていた少年が、
死体を発見してしまいますが、通報から戻ったら、死体が増えていて…?
コミカルな雰囲気ながら、がっつり考え込まれたミステリで、
女性2人の、軽快な会話から明らかになる推理に、引き込まれます。
その次の「対の住処」は一転、笑いの要素はほぼなく、
あまりにも常人離れした犯行動機に、呆然としました。
いちばん、大人のミステリかも。
最後の表題作「赤い糸の呻き」は、読んでいて思わずなんと!と言ってしまうくらい、
真相も犯行理由も、予想を超えるもの。
先輩刑事の謎の死について、療養中の女性刑事と義理の妹が、
2年前のエレベーター内の殺人事件が原因ではないかと、
まったりお茶をしながら語り合います。
会話する2人の、のほほんとした空気からは想像できない、
インパクト大のミステリ!さすが表題作!と思いました。
5つの短編全部、犯人も動機も分からなかった…。
何となくこの人かな、と思っても、動機と妙な状況の理由が⁇でした。
意外な動機度:★★★★★
5つすべて、犯人が分からないんですけど、
動機はそれ以上に分からない!
「お弁当ぐるぐる」「カモとネギは鍋のなか」「対の住処」は、
真相を読むと、ア~なるほどね!納得!となるのですが…。
「墓標の庭」「赤い糸の呻き」は、ただただ唖然。
いやいやこれは、分からない!
特に「赤い糸の呻き」の真相が当てられた人は、すごい、すごすぎる。
個性的な登場人物度:★★★
「お弁当ぐるぐる」で事件を捜査するのは、
ぬいぐるみ警部シリーズに出てくる、超個性派の刑事たち。
今回も、暴走した推理と、特殊な趣味と、妄想が全開で、笑いながら読みました!
(シリーズ読んでいなくても、全然OKです)
「カモとネギは鍋のなか」で鋭い推理を披露するのは、ラブラブな女性カップル。
「赤い糸の呻き」で刑事の義姉から話を聞いて、ありえない真相を暴き出すのが、
料理上手で美人で聡明な義妹ちゃん。
「対の住処」では、ラフな服装でマイペースな捜査をする、
若い女性刑事の推理が冴える。
表紙からしてですが、女性が大活躍です!
う~ん、と唸る真相が待っている!
犯人当てを楽しむもよし、ただただ驚き楽しむもよし!