作者名:城平 京 講談社タイガ
「二十三年前、私は妖狐と取引し、妻を殺してもらったのだよ」妖怪と人間の調停役として怪異事件を解決してきた岩永琴子は、大富豪の老人に告白される。彼の依頼は親族に自身が殺人犯であると認めさせること。だが妖狐の力を借りた老人にはアリバイが!琴子はいかにして、妖怪の存在を伏せたまま、富豪一族に嘘の真実を推理させるのか!?虚実が反転する衝撃ミステリ最新長編!
琴子の高校生時代のエピソードも、明らかに!
琴子の恋する可愛らしさと、知恵の神の冷酷なまでの公正さ…
今回も、しっかり描かれた長編です。
完全犯罪を崩せ!度:★★★★★
今回は、ある大企業の会長で、紳士な老人・音無に奇妙で厄介な依頼をされる話です。
この会長、不治の病に侵されて余命いくばくもない今、
自分が過去に行い、犯行がばれず時効になった妻殺しを、親族に推理させたいとのこと。
会社の無理な拡大を続けていた彼女を、みんなのために殺すしかないと思い詰めた彼は、
何と妖狐に殺してもらったのです!
怪異の力を借りたため、自分にも子どもたちにも完璧なアリバイがあり、
妻の死により経営は回復、支配されていた子どもたちも、好きな道を選び幸せになりました。
しかし死が迫った今、ある理由で自身が殺人犯だと家族に告白したいのだけれど、
いかんせん妖狐の存在など持ち出すわけにもいかず、
琴子に頼んで、自分を犯人とする推理合戦を誘導してほしいという、ややこしい話!
琴子は、当時の音無会長の不可能犯罪を可能とする推理を創り出し、
家族がその推理にたどり着くようお膳立てをし、
妖狐の存在抜きで、会長が犯人だと家族に納得させなければいけません。
…本当にややこしい。
しかも、つぎつぎ意外な事実が明らかにされていき…?
こんがらがった話と状況ですが、楽しんで読めるのが、このシリーズのすごいところです。
序盤の高校生の時のエピソードや、六花さんのマイペースすぎる逃亡劇が語られた後、
そのままの楽し気なテンションで、いつの間にか本格ミステリに移行しているので、
すいすい読めちゃう恐ろしさ!
琴子の恋人で異能の青年・九郎との、コミカルなやり取りが挟まれるのも魅力的です。
というか、どんどん琴子の品のない下ネタ発言は悪化している気がする(笑)
琴子の揺るぎなさ度:★★★★
琴子の特徴、それは怪異に知恵を貸し、この世の秩序を守るという自らの務めを、
恐ろしいまでに的確に執拗にこなすこと。
優しさも見せますが、道理に沿わない秩序を乱す行為に関しては、容赦しません。
今回も、わ~お厳しい!という一面が…。
とても頼もしい主人公ですが、その立場の危なっかしさが浮き彫りになることも。
まあ、普段の無敵感がけっこう半端ない主人公なので、
多少危うさがないと、九郎の立場がないか(汗)
毎回、琴子にさんざん毒のある対応をしたのち、
瞬間的なデレ?を見せる九郎ですが、今回もしっかりあります!
いつまでたっても、何とも言えない距離感のカップルですが、
だんだん九郎の本心が見えてくるのも、このシリーズの見どころかと。
女性2人の強烈キャラ度:★★★
琴子の高校生のときのエピソードが序盤に出てきますが、
予想以上に、学校生活で浮いてた!しかもそのまま適応してた!
どんだけ噂を残してきたんだこの子、と突っ込みたいです。
シリーズ進むごとに、琴子のずれっぷりが顕著に。
ラストに、ある場所に行くことを九郎にねだったことが判明するのですが、
読んだとき吹き出しました(笑)
六花さんが、琴子の屋敷からいなくなった後、
どのように暮らしていたかの一部が分かるエピソードも描かれています。
こっちも、ずれっぷりがヒドイ(笑)驚異のマイペース!
改めて、メインの女性キャラ2人の、常人離れのすごさを痛感する3作目でした。
まぁ、実際常人ではないから、しょうがないか…にしても、相変わらず吹き出すシーンが多いです。
人ならざる者が起こした殺人を、人が起こしたと納得させる異様な推理劇。
虚構の力が炸裂する、またしても驚きのつまった大胆なミステリです!