作者名：ジャック・カーリィ 文春文庫
惨殺された女性記者。酒場で殺された医師。刑務所で毒殺された受刑者。刑事カーソンの前に積み重なる死―それらをつなぐ壮大・緻密な犯罪計画とは?緊迫のサイコ・サスペンスと精密な本格ミステリを融合させる、現在もっとも注目すべきミステリ作家カーリイの傑作。
暴力的な事件と、暗躍する謎の男たち。
きらびやかな資産家一族の、恐るべき秘密とは？
いよいよ技巧派度：★★★
1作目の「百番目の男」は、インパクト大のスピーディーなミステリ。
2作目の「デス・コレクターズ」は、緻密な伏線と驚きの真相の、技巧派ミステリ。
そして、シリーズ3作目の本作はというと、安定の面白さの本格ミステリです。
伏線が張られ、登場人物の心情が丁寧に描かれていて、
後半に怒涛の展開と、おなじみのアクション！
そして、今まで見えていたものが、ガラッと様相を変えます！
前作「デス・コレクターズ」が特に傑作だったので、
どうかな～と思いながら本作を読んだのですが、良かった！やっぱり面白い。
事件の始まりは、一人の若い女性記者が、車内で激しい暴力を受けた上に殺害されるという、残虐なもの。
その後も、刑務所で受刑者が毒殺されたり、女性が焼死体で発見されたり、
謎の男同士のトラブルがあったり…。
暴力的な事件が続き、しかし1件1件に繋がりがあるのか分からず、カーソンたちは混乱。
凄惨な事件と暗躍する男たちの行動で、きな臭さはどんどん増していきます。
ずる賢いけれども目的が分からない、謎多き犯人の視点でも語られ、
何だか秘密がありそうな、多大な資産を誇る一族が登場する…などなど、
不穏な雰囲気を感じさせる要素が目立つせいか、何だか不気味でダークな印象かも。
あ、カーソンとハリーの掛け合いは、いつも通りなのでほっとします。
ナイス配役度：★★★★
今回、兄ジェレミーファンには残念なことに、出番なし。
まぁ、いろいろ持って行っちゃう人だから（ジョーカー枠というか…）、あまり出しすぎても問題なのかな？
その分、4作目の「ブラッド・ブラザー」は、ジェレミーがメインの作品なので、
今回は、ジェレミー成分がないのは我慢しましょう（泣）
しかし、代理じゃないですけれど、
かなりずる賢い謎の男・ルーカスが登場するので、物足りなさは薄れます！
序盤は追い詰められた印象だったのに、なかなかどうして抜け目ない人物。
「デス・コレクターズ」にも、とんでもない頭脳のワルが出ましたし、
やはり、このシリーズにはそういう存在が欠かせないかも…。
ルーカス以外にも、出てきますよ～、「こ、こいつ！」と言いたくなってしまうようなキャラが…！
人でなし対PSITコンビの、クライマックスのぶつかり合いは、
ハラハラしつつも何だかスカっとしちゃいました。
嫌～なやつも出てきますが、逆に、惚れ直してしまう人も。
相変わらず、登場人物が魅力的なシリーズです。
そしてやっぱりピンチ度：★★★★★
カーソンが、毎回女性にもてて、ピンチに陥るのは、もはやお約束。
いっそ、その展開がないと、物足りない（笑）
人生で、何回犯人に殺されかけるんだろうか、この人。
今回は、シリーズ中でも、屈指のピンチ！
助けが望めない状況に追い込まれてしまいます。途中の展開にびっくりした！
おまけに、ハリーまでもが、絶体絶命に陥るのです。
このダブルピンチからの脱出に貢献するのは、思いもよらぬ人物。
登場人物の機転に、興奮してしまいます！
そして、今作のヒロイン役は、いったい誰なのか…ぜひ、読んで確認してみてください。
今のところ7作目まで出ているのですが、本当にクオリティが下がらないんですよね。
1作目が面白かったから、全部取り寄せて一気に揃えて読んだんですけど、
いい判断をしたなぁ…と悦に入ってしまいました（笑）
テンポのよいサイコサスペンスのシリーズ。
海外捜査ドラマが好きな人にも、おすすめです！
