作者名:澤村 伊智(いち) 角川ホラー文庫
不審死を遂げたライターが遺した謎の原稿。オカルト雑誌で働く藤間は後輩の岩田からそれを託され、作中の都市伝説「ずうのめ人形」に心惹かれていく。そんな中「早く原稿を読み終えてくれ」と催促してきた岩田が、変死体となって発見される。その直後から、藤間の周辺に現れるようになった喪服の人形。一連の事件と原稿との関連を疑った藤間は、先輩ライターの野崎と彼の婚約者である霊能者・比嘉真琴に助けを求めるが―!?
後半、驚きの真実と戦慄の結末が…ミステリとしても秀逸!
「ぼぎわんが、来る」に続く、恐怖の第2弾!
変わらず怖い度:★★★★
都市伝説やオカルト話を扱う雑誌で、ある怪談の記事を書いたライターが、
両目をくりぬかれた状態で発見されます。いきなり怖っ。
その現場から、ある投稿小説の存在が明らかに。
それは、複雑な家庭環境で学校でもいじめにあう、ホラー好きな少女が、
「ずうのめ人形」という怪異に遭遇するという、実話風の作品。
この小説を読んだ青年・藤間の前に、作品に出てくるずうのめ人形が現れ、
目撃するたびに、どんどん近づいてくる…。いや~な展開。
先に読んだ人間も殺されており、人形に追いつかれた時が最期らしく、
追い詰められた藤間は、知り合いのライター・野崎に助けを求めます。
そして比嘉妹・真琴が出陣!というのが、おおまかなあらすじ。
ホラー大賞を受賞した前作「ぼぎわんが、来る」につづく、比嘉姉妹シリーズ第2弾です。
「ぼぎわん」と比べてどうかというと…
変わらず怖いし、面白い!
「ぼぎわん」は昔から存在する恐ろしい存在でしたが、
今回の「ずうのめ人形」は、最初は都市伝説として語られていた模様。
そのせいか、作中には都市伝説に絡んだ話や、実際のホラー作品がそのまま出てきたりします。
作者の、ホラーへの愛が伝わってくる作品でした。
この「ずうのめ人形」、よくある話を聞いた人の所へ来る呪い、という感じなのですが、
それにしては奇妙な点があり、さらには比嘉姉妹との因縁も明らかになるのです。
人形が、ゆっくり殺しにやってくるって、やっぱり怖い…。
真琴と野崎が活躍度:★★★
投稿原稿の内容と、現在が交互に語られ、第3章からは現在の怪異との対決になります。
原稿の中で描かれる、いじめにあう孤独なホラー好き少女のパートも、
ずうのめ人形に迫られる中、必死に謎を解こうとする現在のパートも、
どっちも怖くて、ハラハラです。
今作でも、妹・真琴と、婚約者のライター・野崎のコンビが、怪異を解明しようと奮闘。
今回の敵「ずうのめ人形」は、話を聞いた人のところに現れ、
だんだん距離を詰めてきて、最終的に殺されます。
しかも、こいつには、何とも迷惑な性質が……う~む、ぼぎわんに負けていません。
昔から存在する古きもので、ひたすらしつこく狙った獲物を狩ろうとする、ぼぎわん。
都市伝説という「広がり」事態が恐怖で、無差別的怖さがある、ずうのめ人形。
いやいや、どっちも激しくお断りしたいです(汗)
今回の敵は非常に厄介な相手で、正体も対抗策も分からない。
手掛かりは、投稿された原稿だけ…これも誰が送ってきたのか分からない。
生き延びるためには、この謎を解くことが必要であり、
ミステリ小説としても面白かったです。
これは騙される度:★★★★★
第2章の終わりでも、えっ?となりましたが、
第3章のクライマックスに、騙された―!ってなりました。
いや、読んでいて、全然気が付かなかった。
そして、元凶に対する、あまりにも容赦のない結末に、震撼…!
「ぼぎわん」では、ぼぎわんの恐ろしさがまず印象に残り、
人間のエゴも描かれていたなぁという感じでしたが、
「ずうのめ」では、ずうのめ人形の恐ろしさよりも、
人間の醜さが目立つくらいだったかもしれません…。
「ぼぎわん」が好きか、「ずうのめ」が好きか、ぜひ読み比べていただきたいです!
3作目「などらきの首」は短編集ですが、どのエピソードもクオリティが高いですし、
4作目「ししりばの家」では、また新たな戦慄が…。
初めてホラーで、シリーズ全部集めようと思った作品です。
怖さでも面白さでも、本当におすすめ!
緻密なプロットで迫る、恐怖と驚愕!
ぜひ、「ぼぎわん」と読み比べてみてください。