作者名:北山 猛邦 講談社文庫
優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、ファンタジックな短編集。ミステリの醍醐味、ここにあり!
可愛らしい表紙に、油断することなかれ!
読者を唖然とさせる、衝撃的な結末が待つ、傑作短編集!
インパクトがすさまじい度:★★★★★
恋のおまじないに必死になる女子高生がたどり着く、驚愕の結末「恋煩い」。
美しい楽園の島に住むのは、妖精候補の子どもたち「妖精の学校」。
孤独な男性が拾った携帯電話の持ち主は…「嘘つき紳士」。
怪物に石像にされた人々を、元に戻す方法が見つかったのに?「終の童話」。
難病に侵された少女のために、星座を消して見せた少年「私たちが星座を盗んだ理由」。
以上5つの短編、すべてが印象に残る話でした!
表紙が可愛らしいし(片山さんのイラストに惹かれてつい、買っちゃった部分も…)、
タイトルもファンタジーっぽいし、
「妖精の学校」「終の童話」は、序盤は美しいおとぎ話だし、
読んでいて油断しましたね(汗)
クライマックスに、今までの世界は何だったのか、というくらい様相を変える、
心臓に悪い短編ばかりで、何回か思わずひい~って言いました…。
だんだん快感になる度:★★★★★
見事に騙してくれるので、次の話では何が待っているのかな?と、
だんだん騙されるのが、快感になってきます。
個人的に、特に印象に残ったのが、「恋煩い」と「終の童話」。
「恋煩い」が、最初に収録されている話なんですけど、いきなりガツーンと来ました!
いや~、これは気づかないです!
先輩への恋を叶えようと、たまたま聞いた、恋のおまじないに夢中になる少女。
彼女の奮闘っぷりに、つい恋の行方にばかり集中していたら、やられた!
最初にこれを読んで、これはただごとではない…と気づき、
その後の物語は、騙されるものかと、注意して読んでいたのですけれど、
やっぱり結末は全然分からなかったです。
「終の童話」は、村人が怪物に石像にされ、やっと元に戻してくれる救世主が来たのに、
何者かが石像を破壊しだして…という、おどろおどろしいメルヘン世界。
いちばん、恐ろしい事態に見舞われる物語ゆえに、読んでいてハラハラ感が半端ないです。
真相が、またすさまじい!
うわっ………となった人、多いのではないかと思います。
でも、個人的にこれがいちばん面白かった、かな?
どれがお気に入り?度:★★★
おのおの、全く違う系統の話なので、
人によって、お気に入りになる話が、分かれそうな短編集。
私は、インパクトという面で「恋煩い」「終の童話」がお気に入りですが、
ミステリとしては、「嘘つき紳士」が面白いかと。
意味が分かったときに、よくこんな話を思いついたなと、その発想に驚くのが「妖精の学校」で、
不気味ながらも美しい、日常から逸脱した設定がお気に入り。
切なさがマックスなのが「私たちが星座を盗んだ理由」です。
いずれも、刺激的な読書体験になりました!
どんでん返しに、ハマりそう!
どれも読む価値ありの、クオリティの高い短編なので、おすすめです!