作者名:米澤 穂信 創元推理文庫
「わたしたちはこれから、新しくオープンしたお店に行ってマカロンを食べます」その店のティー&マカロンセットで注文できるマカロンは三種類。しかし小佐内さんの皿には、あるはずのない四つめのマカロンが乗っていた。誰がなぜ四つめのマカロンを置いたのか?小鳩君は早速思考を巡らし始める…心穏やかで無害で易きに流れる小市民を目指す、あのふたりが帰ってきました!
この2人を、待っていました!自称小市民の、スイーツライフと事件帖!
4つの短編は、各話表紙絵付きという嬉しさです。
素晴らしき日常の謎度:★★★★
「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」
「秋期限定栗きんとん事件(上・下)」ときて、
11年ぶりに出た新刊は「冬期限定」かと思いきや、4つの短編からなる短編集。
あれっと思ったけれど、完結してしまうのは寂しいので、むしろ嬉しい!
互恵関係をガンガン利用していた頃の2人の、日常の謎が4つ収録されています。
最初の話は表題作「巴里マカロンの謎」。
名古屋に新店舗がオープンした人気店の、
期間限定マカロンを全種類食べるために、小鳩君を呼んだ小佐内さん。
3つのマカロンが載ったセットを注文し、さぁイートインで堪能しようと思ったら、
手を洗おうと離席した間に、なぜかマカロンが4つに増えている!
1つのマカロンに込められたドラマと、小佐内さんのスイーツ愛が際立つ作品でした。
相変わらず、可愛いのに可愛くないミステリ!
2つ目の「紐育チーズケーキの謎」は、縁あって中学校の文化祭に、
チーズケーキを食べに行くことになった2人が、
事件に遭遇し、何と小佐内さんが拉致されてしまうエピソードです。
小鳩君のリアクションに思わず笑ってしまう、伏線が秀逸で、
何とも2人‟らしい”展開に。
3つ目の「伯林あげぱんの謎」は新聞部が舞台で、堂島健吾登場!
新しく開いたパン屋さんの、ドイツ風の揚げパンを4人分用意して、
1つだけのマスタード入り当たりパンを食べた部員が記事を書くはずだったのに、
誰も辛そうじゃない?
はて、辛い揚げパンはいずこに…
ついつい謎解きを始めてしまった小鳩君が暴いた真相とは。
そういうことかい!と思わず言ってしまった、コミカルで好きなエピソードです。
最後の「花府シュークリームの謎」では、
小佐内さんの行動力と小鳩君の推理が冴える!
冤罪で停学になったと訴える少女の、疑惑を晴らすために活躍。
そして、頑張った小佐内さんを迎えるラストに、思わずニヤニヤしてしまう…!
2人のテンションを堪能度:★★★★
このシリーズの醍醐味、それは2人の何とも言えない互恵関係かと。
不都合な場面から逃げるために、お互いを利用してもよし、という同盟関係で、
確かに読んでいて、付き合い方がドライでシビアです。
しかし、その反面、誰よりもお互いを理解しているのが分かって、
う~ん、たまらない距離感!
そんな小鳩君と小佐内さんのコンビが繰り広げる、
完全には微笑ましくならない、本性を匂わせる思わせぶりな会話を、
本作でも堪能出来て、満足の短編集でした。
小佐内さんのスイーツ談義と、不可解な事件も、変わらず面白い!
久しぶりに新刊が出た勢いで、続刊が早めに出ることを願ってやみません…。
ファンに嬉しい短編集度:★★★★★
いちごタルト・トロピカルパフェ・栗きんとんは、
各話ごとに独立した謎が出てきたけれど、繋がりはあるので短編集ではなく、
本作みたいな形で楽しめるのは嬉しいです(一応繋がりはあるので、連作短編なのですが)。
そして、何とも贅沢なことに、各話に扉イラスト付き!
片山若子さんの装丁イラストが、毎回楽しみだったので、これは嬉しい。
「伯林あげぱんの謎」では、初の堂島君のイラストも見られるし、他の3つも素敵です。
2人の校内の姿も、放課後の行動も楽しめて…。
何なら、こういう短編集あと何冊か出してほしいです、本当に。
シリーズ読んだ人は、もうぜひぜひ読んでください!
小市民なはずの2人は、学校でもお店でも謎に出くわし、ついつい…。
美味しそうなスイーツよりも気になる2人の、謎解きが止まらない!