作者名:米澤 穂信 創元推理文庫
一九九一年四月。雨宿りをする一人の少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国したとき、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶の中に――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。著者の出世作となった清新なボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ。
日本人とは違う見方をするマーヤに、ハッとさせられる…。
美しく切なく胸が苦しくなる…
う~ん、とにかくネタバレなしで読んでほしい作品です!
ヒロインの魅力度:★★★★★
主人公の男子高校生・守屋と、同級生のクールな女子・太刀洗が出会ったのは、
日本人にはあまりなじみのない、ユーゴスラヴィアから来た少女・マーヤ。
父親が日本で仕事をする2か月の間、
世話になるはずだった人物がすでに死んでしまっていて、
途方に暮れていたところ。
彼女は2人の協力で、同級生で旅館の娘・いずるのところに、
居候することになります。
そして、守屋たちは、マーヤの日本文化探索に関わることになるのですが、
このマーヤ、とにかく好奇心旺盛な勉強家!
日本語はペラペラで、更なる知識を吸収しようと精力的に活動します。
そして、謎や疑問は、決して放置しない。
彼女と関わることで、何気ないものに込められている、
文化的歴史的背景を見直し、
日常の謎に遭遇することになる、守屋たち。
マーヤのパワーと魅力に感化されて、少しずつ変わっていき…。
この小説の読後、考えてしまうのは、まずマーヤのこと。
眩しいくらい生命力と好奇心に溢れていて、誰よりもよく考えていて、
「キメラの国」に帰る少女。
今まで読んできた本の中でも、かなり印象に残るヒロインでした。
日本ならではの謎度:★★★★
マーヤがいた2か月の間に遭遇する謎は、まさに日常の謎で、
普通に考えれば、真相を聞いても、ああなるほどね…という感じかもしれません。
ですが、マーヤから謎が提起されると、
たちまち、何だかドキドキする出来事が起きたよう。
「哲学的意味がありますか?」と、つねに問いかける彼女の眼には、
日本のありきたりの日常は、どんな不思議に変化するのか。
途絶えることなく、続いてきた文化があるありがたさを知り、
まだまだある、実は知らないことを楽しめる青春ミステリです。
改めて世界を知る度:★★★
ユーゴスラヴィア…はっきり言って、当時全然知らなかった(汗)
名前聞いたことあるけれども、ヨーロッパのどこかだっけ、くらいの…。
6つの国からなる共和国連合だったそうですが…
多くの民族・国家が仲良くするのって、
やっぱり難しかったんですね。
物語の舞台は、1991年で、ユーゴスラヴィアで大きな動きがあった年。
非常にデリケートな状況を抱える国から来たマーヤが、
自分たちの未来のために、自分にできることを必死でやろうとする姿に、
とても考えさせられました。
話題になった「王とサーカス」は、
同級生・太刀洗真智が10年後の海外で遭遇する事件を描いた作品で、
ベルーフシリーズとして、続いています。
どっちから読んでも、面白い!
日常に、突如飛び込んできた、鮮烈な存在。
忘れられない出会いを描いた、何とも言えない余韻を残す傑作!