作者名:真梨 幸子 幻冬舎文庫
少女漫画『青い瞳のジャンヌ』をこよなく愛する“青い六人会”。噂話と妄想を楽しむ中年女性たちだったが、あるメンバーの失踪を機に正体を露にし始める。飛び交う嘘、姑息な罠、そして起こった惨殺事件―。辛い現実から目を背け、ヒロインを夢見る彼女たち。その熱狂が加速する時、新たな犠牲者が…。殺人鬼より怖い平凡な女たちの暴走ミステリ。
いや~なミステリといえば、この人。
恐ろしくっておぞましい、女性の暴走を描き切る!
すさまじく不安定度:★★★★★
真梨さんの本は面白いんですけど、
読むほど読者の精神を不安定にさせる、パワーがあります。
「殺人鬼フジコの衝動」とか「孤虫症」とかも、すごかった…。
気分が落ち込んでいるときには、気を付けて読んだ方がいいかも(汗)
登場人物の、精神の均衡が崩れていく描写が、本当にぞ~っとするもので、
生理的に嫌悪感を抱くシーンが多いので、
何というか、負のパワーに引きずり込まれて、
不安定な登場人物に振り回されるんです…。
面白いから、うわ~!ひいっ!とか思いながらも、止まらないところが、また恐ろしい。
本作も、家庭やお金の問題を抱えた女性たちが、
どんどん暴走していく様子がもう…!
昭和に連載されて、日本中の少女たちを熱狂させたにもかかわらず、
納得の最終回を迎えることなく終わってしまった、少女漫画「青い瞳のジャンヌ」。
40~50代になった現在でも、まだまだジャンヌが好きで、
ファンクラブの頂点に立つ幹事スタッフ6人組「青い六人会」のメンバーが、
各章の主人公として、おのおのの物語を語っていきます。
メンバーは、エミリー・シルビア・ガブリエル・ミレーユ・ジゼル・マルグリットと、
会特有のネームで呼び合い、優雅で上品な集まりにこだわり、
とにかくジャンヌについて語り合う。
少女時代にはまっていた漫画に、年を取ってから再びハマる、というのは普通なんですが、
辛い日常からの逃げ道なのもあるのか、ハマり方が尋常ではない…。
みんなの人気者で、いちばん若く美しいガブリエル以外の、
抱える闇の深さがとんでもないのです。
DV夫や、借金、子どもなど家庭の問題…。
ジャンヌの世界とはかけ離れた、けれども多くの人が苦しむ現代の悩み。
6人のメンバーのうちの何人かが問題を起こし始め、各自の不安が絡み合い、
みんなが混乱しだし、どうしようもない暴走状態に陥っていく描写が、
鬼気迫っていて、怖いけれども止まらないです。
特に、エミリーとシルビア、ミレーユの章のインパクトがすごい。
あるメンバーが入会したことにより、一気に恐怖の展開を突き進む、
まさに暴走ミステリでした!
抱える問題度:★★★
「青い六人会」のメンバーは、みんな問題を抱えています。
夫のDVや、借金、子どもの受験失敗と引きこもり、親の介護問題、などなど。
不安で苦しい日常から抜け出す手段は、大好だった漫画…。
ここまでは分かるんですけど、どうやらハマっていた少女漫画には、
当時とんでもない問題が持ち上がっていたようで。
少女時代に、バイブルだった漫画に問題があり、
多感な時期に強いショックを受け、そのことに折り合いをつけられずに、
再び辛いときにのめり込んで、さらに…。
不安定の連鎖が止まらないですね…(汗)
騙されるミステリ度:★★★★
とにかく、女性たちの混乱した心理に振り回され、
そこについつい目が行ってしまうのですが、
伏線が張られ、ラストに一気に謎が解ける、巧妙なミステリです。
この作品の登場人物たちは、もともとエキセントリックな性格みたいですが、
一歩間違えば、普通の人もこうなってしまうかも…
なんて考えてさせてしまうところが、また怖い作品です。
イヤミス好きには、たまらない作品。
夜中にこっそり一気読みして、とことんゾ~っとしてもいいかも…?