作者名:恩田 陸 角川文庫
一億円の契約書を待つ、締切直前のオフィス。オーディション中、下剤を盛られた子役の少女。推理力を競い合う大学生。別れを画策する青年実業家。待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。真夏の東京駅、二七人と一匹の登場人物はそれぞれに、何かが起こる瞬間を待っていた。迫りくるタイムリミット、もつれ合う人々、見知らぬ者同士がすれ違うその一瞬、運命のドミノが次々と倒れてゆく! 抱腹絶倒、スピード感溢れるパニックコメディの大傑作!
終始ハイテンションの、パニックエンタメ!
コメディタッチで描かれるドタバタ劇は、まさにドミノ倒しのごとく!
27人+1匹、みんな主人公度:★★★★★
東京駅に、それぞれ集まった、目的やトラブルを抱えた人たち。
本作で描かれるその人数、なんと27人!(あと1匹)
名前と役割がちゃんと与えられている登場人物が、かなり多い作品ですが、
おざなりにされている感じはなく、1人1人が、こういう人間なんだと、
しっかりと描かれています。
おのおのの視点が細かく分かれて、つぎつぎ語られていきますが、
あっちのトラブルがこっちに飛び火し、
会いたい人に会えず、ちょっと出かけただけなのに事件に巻き込まれ、
警察沙汰の大騒動に、あれ?いつの間にか巻き込まれている!
とんでもない計画を実行に移そうという、怪しい人物が集まるわ、
東京駅に、追加と言わんばかりにトラブルメーカーが到着するわ…。
事態は、どんどんカオスな状況に。
スピーディーにハイテンションに進む物語は、どんどん加速して、
気が付いたら読み終わっていました。
個性爆発度:★★★
1人1人のパートは短いですが、その人のキャラクターがしっかり描かれています。
というか、みんなキャラが濃いので、いちいち印象に残るというか(汗)
なので、大人数が出てくる作品でも、
この人誰だったっけ?と、あまり読み返さずに進めるかと。
オーディションで下剤を盛られた子役の女の子や、
推理バトルで、次期ミステリ連合会の幹事長ポストを狙う大学生たち、
ペット捜索に出る、来日中のホラー映画監督、
集合場所を間違え、なかなか俳句友達に会えないおじいさん、
迷った俳句友達を探す、警察官OBのたくましい面子、
どろどろの修羅場を繰り広げる、3人の男女など。
みんな迷走していますが、いちばんぶっ飛んでいて笑えたのは、
会社のノルマ達成の、危機的状況を乗り越えようとする、
生命保険会社の社員たち!
千葉からもトラブルを呼び寄せ、東京駅でありえない事態を引き起こします。
女性社員が、強い。強すぎる(笑)
うまい具合に回っていく度:★★★★
登場する面子の中には、深刻なトラブルを抱えている人たちも。
彼らのトラブルも、解決どころか暴走しだして、
暴走したまま、他の事件と絡んじゃって…。
収束できるのかな?というくらい、わちゃわちゃしますが、
これが、上手い具合に回っていくんです。
クライマックスは、ハラハラしつつも、笑いが止まらない!
大人数の視点で進む恩田作品は、「消滅(上・下)」がありますが、
こちらはもっと緊迫の雰囲気。
「ドミノ」の、スピード感とテンションが気に入った方は、
ハヤカワ文庫の「ロミオとロミオは永遠に(上・下)」も、
ぶっ飛び設定とハイテンションで楽しめると思います。
こちらは、シリアスとアクションもあり。
幻想的ではない、不穏な謎に満ちてもいない、
エンタメに特化した恩田作品も、おすすめです。