作者名:一條 次郎 新潮文庫
耳を澄ませ。何かが聞こえる――。テノリネコが膨らむ音が。徘徊するネコビトたちの呟きが。貝殻プールのラッコの水音が。盗んだトウモロコシをゆでる熊のご機嫌な鼻歌が。そして、吸血鬼の奏でる陽気なラグタイムピアノが……。混沌と不条理の中に、世界の裏側へと読者を誘う魅惑的な企みが潜む。新潮ミステリー大賞を受賞したデビュー作『レプリカたちの夜』で大ブレイクした鬼才による、異彩を放つ傑作オリジナル短篇集。
「レプリカたちの夜」で、インパクト大のデビューをした作家さん。
こちらは、より読みやすい作品になっていて、おすすめです!
表紙につられた度:★★★
デビュー作「レプリカたちの夜」は、珍妙な設定にも惹かれましたが、
表紙のシュールなシロクマに惚れたのもあり、購入しました。
これが、なかなか難解。
何回か読まないと、自分なりの解釈が出ない作品かと。
世界観は好きだし、シロクマの暴れっぷりがツボにはまったので、また読もうと思ったのですが、
新作を買うかどうかは、正直迷っていました。
で実際は、店頭で表紙を見て、速攻購入。
またしてもシュール!ピザ持った猫なんて(笑)
このキャラクターが、実際に出てくるのか、気になって気になって…。
でも面白かったので、一目惚れして買って、良かったです!
謎の生き物の魅力度:★★★★★
全編、奇妙な生き物が出てきますが、これが魅力的。
テノリネコが、可愛くて可愛くて、一番好きです。
欲しい、欲しいけど…この習性は困る!
困った習性ゆえに(人間サイドにも問題がいろいろある気がしますが)、
どんな結末やねん!という事態に。
他にも、結構ゴーイングマイウェイなネコビトや、本当に美味しいのか気になるアンラクギョ、
突っ込む気すら失せる謎のラッコ、相棒になってほしいとは思えない人間みたいな犬、
食欲暴走気味の熊(?)、何でもありすぎる仙人、もはや同情する吸血鬼がご出演。
カオスですね(笑)
習性が個性的なのはもちろん、性格も個性的だから、どの物語も予測不能です。
世にも奇妙で面白い度:★★★★★
奇妙な生き物が出てくるから、面白いというよりは、
奇妙な生き物と人間がやらかしてくれるから、面白いという感じです。
人間たちも、負けていないんですよ(笑)
いちばん緊迫感があるのは、「アンラクギョ」ですかね。
SF要素が強いのが、「テノリネコ」「貝殻プールでまちあわせ」で、
「まぼろしの地球音楽」は、何とも分類しにくい物語。
「採って穫って盗りまくれ」「ヘルメット・オブ・アイアン」は、もうどこから突っ込めばいいのか。
「ベイシー伯爵のキラー入れ歯」は、タイトルからして面白いだろうと思ったら、
やっぱり面白かったです。
混乱と、不条理と、謎のユーモアと、驚愕と…。
とにかく日常からかけ離れた物語が読みたい人に、おすすめ!