作者名:皆川 博子 ハヤカワ文庫JA
18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、身許不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ〉と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。本格ミステリ大賞受賞作『開かせていただき光栄です』続篇。
あの人物の、謎に包まれた過去が明らかに!
またしても傑作ミステリ…切なさパワーアップしてます。
序盤から衝撃度:★★★★★
前作では、解剖学教室のメンバーが、隠し事をしつつも協力して…という話でしたが、
今作では、5人中残った3人と、治安判事たちの場面から始まります。
愛弟子エドとナイジェルが去った後、ダニエル先生は意気消沈。
残った解剖学教室メンバーの、アル・ベン・クラレンスは、
前作で知り合った盲目の治安判事の手伝いで、犯罪防止の新聞づくりをしていました。
そこに、奇妙な死体を調べてほしいとの依頼が。
ふんふん、おなじみのメンバーが、謎の死体を調べるところから事件が始まるのね…
なんて序盤は軽く読んでいました。
そして5分の1ほど読んだところで…「何ーっ!」と叫んでしまうような事態が!
しばらくフリーズしました。ま、まじですかと震撼。
今回、こんな話なんだ…。度肝を抜かれた読者が多数いたに違いない!
さらに、前作でとんだ目にあった例の青年が出会った悲しい女性には、
何とも謎が多く恐ろしい過去があり、
見世物小屋にいた通称‟ケンタウロス”の男性にも、秘密が。
ある人物の過去をつづったパートでは、戦慄してしまう当時の精神病院の様子が語られます。
物語が進むにつれて明らかになっていく事件の真相は、衝撃的でおどろおどろしい!
前作とは、かなり雰囲気の異なる作品だと思います。
より、ディ―プでダークな内容ですかねぇ。
前作も、人間の身勝手な欲望が明らかになっていきましたが、
解剖学教室メンバー5人とダニエル先生、そして犬のチャーリーの、
ユーモラスなやり取りがありましたから…。
でも、やはり面白いです。そこは、皆川先生クオリティー!
悪党に腹立つ度:★★★★
ガラス職人と依頼された新しい楽器、有名な発明家が望んだ物、
十数年前に起きた事件、悪夢的体験をしながらも長年恋人を探す女性、
謎の死体‟天使”に書かれたメッセージ「ベツレヘム」が表す場所。
などなど、今回も謎がいっぱい。
これらの謎が収束していくクライマックスは、圧巻でした。
そして、悪者もいっぱい!
前回もワルは出てきましたが、今回の悪人たちは同情の余地なしで、
冷静な判事助手のアンも、キレて罵ります!
多くの人の人生を狂わせた悪人には、後半腹が立ちっぱなしでしたが、
真相の衝撃度に、それすら少し霞んでしまった…(汗)
過去の悪事の末路が明らかになるシーンでは、残酷だけど、
ちょっと…いや、かなりスカッとしてしまいました。
進むほど胸が痛くなる度:★★★
衝撃の展開をしてから、読み進めるほどに、胸が苦しかったです~(泣)
でも気になるし、つい止まらなくなるんですけど。
ある人物の過去が、本人の語りで明らかになりますが、
まさか、こんなとんでもない人生送っていたとは!
辛くて悲しいばかりの話じゃないんですけど、軽い気持ちでは読めないかと。
しかし、やはり、面白い…。
やっぱり、このシリーズが好きだ!という方は、
一部メンバーが「クロコダイル路地」(講談社文庫)に出演していますよ。
こちらは、挿絵付きでボリュームたっぷりの大作。フランス革命に興味のある人には特におすすめ。
順番的に、「開かせていただき光栄です」→「アルモニカ・ディアボリカ」→「クロコダイル路地」です。
どの本も面白いので、ぜひ読んでいただきたい!
解剖学教室メンバーは、帰ってきてくれるのか?
最後の2行が、たまらなく切ない…切なすぎる!