【SF】ハリー・オーガスト、15回目の人生|ハリーは死んでも記憶を残したまま、ハリーとして生まれ変わる。死ぬたび同じ人物に生まれる彼。3回目の人生で体質を受け入れ、11回目の人生で、世界の終焉を招く、宿敵の存在を知る!そして15回目の人生で…⁉時を超えた対決を描く、驚愕の人生の物語。

作者名:クレア・ノース   角川文庫

1919年に生まれたハリー・オーガストは、死んでも誕生時と同じ状況で、記憶を残したまま生まれ変わる体質を持っていた。彼は3回目の人生でその体質を受け入れ、11回目の人生で自分が世界の終わりをとめなければいけないことを知る。終焉の原因は、同じ体質を持つ科学者ヴィンセント・ランキス。彼はある野望を持って、記憶の蓄積を利用し、科学技術の進化を加速させていた。激動の20世紀、時を超えた対決の行方は?

死んだと思ったら、全く同じ状況で、同じ人物に生まれ変わる。

繰り返す者として生まれた人間…これは、何かの罰か?それとも使命か?

ハリーの‟終わりなき人生”の物語。その結末とは…。

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驚愕すぎる人生の物語:★★★★★

人の体を乗り移るゴーストの物語「接触」と、

他人に記憶されることが出来ない女性の戦い「ホープは突然現れる」。

非情に特殊で過酷な設定を描く、クレア・ノースですが、

この2つよりも前の作品である本作も、何それどんな話?となるようなもの。

人が生まれ変わる話、というだけでなく、

1919年に生まれたハリー・オーガストが、年を取って死んでしまったら、

また1919年の生まれた瞬間から、人生が始まりなおす、という話なのです。

しかも1回ではなく、何回も何回も!

……う~ん、嫌だなあ、そんな境遇。

当然ハリーも、大混乱。

2回目の人生ではひたすら混乱して自殺、3回目の人生では宗教に救いを求め、

4回目の人生では科学を学び…ある出来事がきっかけで、危機的状況に追いこまれます。

しかし、彼を助ける重要な出会いが…。

実は彼のような存在は1人だけでなく、連絡を取り合っている集団もいて、

徐々にハリーも、繰り返し生きる者:カーラチャクラとして、

苦しみながらも、順応していくことになります。

のちに、カーラチャクラの中でも特別な、ネモニックの存在を知り…。

ハリーはその後も、5回目、6回目と人生を繰り返していき、

それぞれの人生を、やはりハリー・オーガスト、として生きていきます。

しかし、11回目の人生で、世界の秩序を壊す存在が!

ハリーと同じカーラチャクラである科学者、ヴィンセント・ランキスの目的とは?

物語の緊迫度は、進むにつれて増していき、

ああ~っ、そうくるのね~!という結末が…。

繰り返す者たちの、時間を超えた戦いという、壮大なSF作品でした。

不思議な存在の、リアル体験談度:★★★

あり得るはずもない、カーラチャクラという、不可思議な存在。

こんな存在がいるとして、その苦悩と、思考の変化、

巻き込まれるトラブルなどを、何ともリアルに描くのがすごいです。

ひたすらハリーが、自分の(何回分もの)人生を語る形式で、綴られますが、

とんでもないエピソードだらけで、ハラハラハラハラ…。

クレア・ノースの物語は、切なくて重厚で、ときに心臓に悪くて、

一気にスピーディーに、読破する感じではないのですが、

じっくり驚きながら読んでいるうちに、引き込まれてしまいます。

ハマる人はハマる作家度:★★★★

私は、まず「接触」を本屋で見て購入し、のめり込んで読みました。

今でも、角川から出ている3作品のうち、いちばん「接触」が好き。

これが面白かったので、すでに出ていた「ハリー・オーガスト」に手を出し、

その後、世界幻想文学大賞受賞作の「ホープは突然現れる」を読みました。

どれも、なかなかお目にかかれない特殊な設定で、

そういうのが好きな人には、本当にたまらない作家さんです。

1作品読んで面白かったら、他の2作品も、ぜひぜひ!

世界を終焉へと導くヴィンセント。

彼を止めることが、ハリーの宿命なのか?

すでに歴史を知っている者同士の、前代未聞の対決の行方は…。

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