作者名:アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫
自らの葬儀の手配をした当日、資産家の婦人が絞殺される。彼女は殺されることを知っていたのか?作家のわたし、アンソニー・ホロヴィッツは、テレビ・ドラマの脚本執筆で知り合った元刑事のホーソーンから連絡を受ける。この奇妙な事件を捜査する自分を描かないかというのだ……。かくしてわたしは、きわめて有能だが偏屈な男と行動をともにすることに……。7冠制覇『カササギ殺人事件』に続く、ミステリの面白さ全開の傑作登場!
「カササギ殺人事件」後の、正統派ミステリ。
クオリティの高いミステリが読みたいときは、この人!
作家目線の面白さ度:★★★★
斬新な構成で、話題になった「カササギ殺人事件」。
今作は、作者がワトソン役を務めるという!
ホームズ役の元刑事ホーソーンは、人並外れて優秀だけれど、秘密主義でやや自分勝手。
いかにも癖のある名探偵で、語り手の作家アンソニーは、振り回されがち。
変わった友人としてそばにいるのはいいけれど、
仕事でタッグを組むのは、大変そうだ…。
自分だけで納得しちゃって、話すべきタイミングと判断しないと、
今わかっていることを説明してくれないタイプ。
気難しく変わり者の探偵と、常識人である助手役という、
ミステリでよくある設定ですが、作家目線というのが興味深いです。
事件の捜査を一緒にしながら、次の作品の取材をしないか、
というのはすごく魅力的な条件かと思いましたが、
まず、その事件が(不謹慎ですが)面白い小説になりそうか、分からないですよね。
本当に解決できるのかも、何もかもが不確定。
風景を自分なりに表現したら、探偵から文句が出るし。
主人公を描写するために、探偵について知りたいのに、自分のことを喋ってくれないし。
やきもきしながら、探偵と行動します。
振り回されるだけの人ではないので、たまに衝突も。
作家の報われないエピソードなんかも出てきて、大変なんだなぁと思い知らされました…。
期待を裏切らない度:★★★★
老婦人が、自分の葬儀の手配をしたその日に殺害され、
葬儀では、居合わせた者が唖然とするトラブルが起き、
彼女が過去に起こし、たいした罰を受けなかった事故には、
いくつかの不可解な点が…。
そして事件はこれだけでは終わらないのです!
事件の鍵は何なのか、見事にミスリードされました!
作品のボリュームとスケールは、「カササギ殺人事件」が上だと思いましたが、
こちらも緻密なプロットで、なんでもない文章にヒントが隠されており、気持ちよく騙されます!
古典ミステリ&現代の手法の合わせ技が、斬新だった「カササギ殺人事件」に対し、
今作は、正統派路線を進むミステリで、
ホロヴィッツのミステリ作家としての技量の高さを、再認識できる作品になっていました。
今後が気になる作家度:★★★★★
翻訳された2作は、どちらも傑作ミステリでした。
「カササギ殺人事件」の後だと、ハードル上がるなぁと思っていたんですけど、
今回も楽しめましたし。
今後の作品も、非常に気になります!
解説を読むと、探偵ホーソーンと作家アンソニーのシリーズは、続く模様。
まだまだぎこちない、この気難しい捜査コンビが、
つぎつぎ事件を解決していくうちに、ベストな相棒になっていくのかな…気になる。
第2作は刊行されているそうなので、翻訳が待ち遠しいです!
丁寧に考え抜かれた、正統派ミステリ。
真相を当てられるか、チャレンジしてみては?