【SF】皆勤の徒|名作かつ迷作!巨大な不定形生物「社長」の下で、今日も「従業者」は命がけで働きます。デビュー作ながら日本SF大賞を受賞した鬼才の、恐るべき独創性が凝縮された4つの物語!「何なのこの世界は⁉」から、じわじわハマっていきます…。これまた独創的な挿絵付き!

作者名:酉島 伝法(とりしま でんぽう)  創元SF文庫

高さ100メートルの巨大な鉄柱が支える小さな甲板の上に、“会社”は建っていた。雇用主である社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上とそれを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、日々の勤めは平穏ではない―第2回創元SF短編賞受賞の表題作にはじまる全4編。奇怪な造語に彩られた異形の未来が読者の前に立ち現れる。日本SF大賞受賞作!

奇々怪々な世界で、異形の登場人物が、日々お務めを果たす。

このたまらない世界観は、何なのか!

ハマる人はハマる、第34回日本SF大賞受賞作

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物語と挿絵と、単語を楽しむ度:★★★★★

「皆勤の徒」「洞の街」「泥海の浮き城」「百々似(ももんじ)隊商」の4つの物語と、

序章・4つの断章・終章からなる作品です。

「皆勤の徒」から「百々似隊商」と読み進めるにつれ、

時系列をさかのぼっていき、どうしてこんな世界になったのかが明らかに。

なので、最初の「皆勤の徒」の世界がいちばん分かりにくいです。

というか、1回読み終わっただけで内容を理解することは難しく、

解説に各話の簡潔な説明があるので、それを読んでからもう一度最初から…

としていかないと、‟なるほど、そういうことね!”と楽しむのが難しい(泣)

ただ、正直、理解しきれない1回目も、

作者ならではの世界観と造語と挿絵だけで引き込まれるし、

何となくわかってきた2回目は、更に面白い!

3回目も4回目も、理解が深まって面白い!

難解で特殊な世界観なので、合わない人もいるだろうけど、

ハマる人は、長期的に楽しめる作品です。

造語がね、本当にすごいんですよ~。

隷重類(れいちょうるい)だの製臓物(せいぞうぶつ)だの、

胞人組織(ほうじんそしき)だの蜜売人(みつばいにん)だの塵造物(じんぞうぶつ)だの…。

読後、自分の漢字知識が、信用できなくなってました(笑)

作者の世界に引き込まれる度:★★★★★

どの話も、作者の中では完璧に確立されているんだろうな…と思うくらい、

ゆるぎなく詳細に描かれています。

最初は「⁇」なんですけど、だんだんはまり込んでしまいました。

創元SF短編賞をとった「皆勤の徒」は、従業者の過酷な労働環境に慄きつつも、

訳の分からない社長との毎日は、妙に気になって、ゆっくりじっくり読みました。

最初から、いきなりトップギアできたなぁと唖然。

「洞の街」は、登場人物の会話がだいぶ増えて、異形が住む町の様子が描かれます。

いくぶん分かりやすくなったかと思えば、またまた謎現象が!

街の秘密と陰謀と…という感じで、「皆勤の徒」とは大分雰囲気が変わります。

「泥海の浮き城」に出てくるのは、移動する住居‟城”と、

そこの住民である昆虫人間たち。

事件を捜査する私立探偵のハードボイルドもの、という、またまた変わった物語。

ここまで、我々に近い意味での‟人間”は出てこず。

「百々似隊商」で、やっと普通の人間が出てきます。

ここで、人間社会に何が起きてこんな世界になったのか、が明らかに!

(解説読まないと分からなかったけれど…)

百々似という生命体が、さまざまな商いに利用される世界で、

隊商の老人と女の子を中心に、物語が展開。

1つ目よりは2つ目、2つ目よりは3つ目、というように、

だんだん話が分かりやすくなっていきます。

1回目で、何となく2つ目3つ目からは楽しめたよ~という人は、

何回か読むと、どハマりするかも!

困る中毒性度:★★★★

1回目は「皆勤の徒」の途中で挫折しそうになりました(汗)

でも、奇妙な造語と、緻密で独特すぎる挿絵に引き込まれ、読破。

3つ目の「泥海の浮き城」くらいからは、結構普通に楽しめました!

百々似、可愛い!

読む人を選ぶ小説で、何回か読まないと理解できないけど、

一回面白いと思ってしまった人はハマる、中毒性のある作品でした。

ここまで個性の塊のSF作品って、見たことないかも…?

文章と挿絵と物語、すべてで楽しむ作品です!

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