作者名:神林 長平 ハヤカワ文庫JA
体内の臓器崩壊現象が頻発する未来社会。かつて人工臓器市場を独占していた巨大メーカー・ライトジーン社なき今、臓器をめぐる奇怪な現象や犯罪が続発していた。都会の片隅で自由に暮らし、本とウィスキーを愛する菊月虹は、ライトジーン社が遺した人造人間。虹は市警の新米刑事・タイスと共に臓器犯罪を次々と解決するが、やがて虹と彼の兄・MJの出生の秘密に関わる陰謀が彼を襲う。傑作ハードボイルドSFの決定版!
どのエピソードも、とにかく面白い!
ハードボイルドSFの魅力満載の、おすすめ作品です。
つくりこまれた世界観度:★★★★★
ライトジーン社という、巨大人工臓器メーカーが解体され、
現在はいくつかの大手メーカーが臓器を生産しています。
人は、謎の臓器崩壊現象の危機にさらされており、
生きている限り人工臓器のお世話になるはめに。
メーカーは、アルカ社やバトルウッド社、セシル社などがあり、
人工臓器に関わる奇怪な事件に主人公が関わることで、話が展開していきます。
主人公は、ライトジーン社が2人だけ作った人造人間の1人で、
中央署掃除課に依頼されて働く掃除屋(スイーパー)・コウ。
兄の人造人間・MJは、バトルウッド社専属の武闘派探偵で、
現在は女性で、コウより見た目が若い(⁉)
2人とも、サイファと呼ばれる超能力者です。
巨大企業の遺産である2人だけの人造人間、超能力を用いた犯罪捜査、
人工臓器を製造するいくつかの企業、臓器崩壊現象に悩まされる人類、
近未来で本と酒を愛する探偵…。
SFハードボイルドファンには、何ともそそられる世界観ではないでしょうか!
各話のクオリティーが素晴らしい度:★★★★★
腕から変化した怪物を、新米刑事と組んで退治しようとする「アルカの腕」。
違法な人工心臓の謎を暴こうとし、兄と対決する羽目になる「バトルウッドの心臓」。
ある部屋だけ認知できない眼をもつ女性、彼女の家の秘密に驚く「セシルの眼」。
おぞましい犯罪が、移植された皮膚からあばかれる「ダーマキスの皮膚」。
骨によって得た望まぬ不死に戦慄する「エグザントスの骨」。
コウが人工声帯の奇跡に出会う「ヤーンの声」。
コウとMJ、そして謎の子どもに訪れる最大の危機を描く「ザインの卵」。
…という7つの話が収録されています。う~ん、個人的にすごくそそられるタイトル。
アクション・ミステリ・SFの要素があって、どれも面白い!
どのエピソードも、単純に超能力を使って戦いながら、
悪人の正体を暴いて解決する!という話ではなく、
この未来社会ならではの生き方や苦しみを描いており、
なるほどハードボイルド小説として面白いなぁと感激。
個人的に切なかったのは「セシルの眼」で、
インパクトがあったのが「ダーマキスの皮膚」と「エグザントスの骨」でした。
超能力と人工臓器の絡んだ話…そういうのが好きなんだなぁと、この本を読んで実感。
ぜひアニメ映画化を!度:★★★
臓器崩壊に悩む未来、人工臓器メーカー、
2人の人造人間の生き方、自由人と一般人、超能力による攻撃…などなど。
映像化向きだと思うんですよね~。
実写もよさそうですけど、アニメにしたら、すごい綺麗で迫力の映像になりそう。
でもアクション満載というより、進歩によって引き起こされるさまざまな問題に切り込むという感じなので、
ちょっと渋いかな…。
本とウイスキーを楽しみながら、マイペースに生きていきたい人造人間だけど…。
この世界には、奇妙な事件が溢れている!