作者名:城平 京 講談社タイガ
「頼みがある。相撲を教えてくれないか?」神様がそう言った。
子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた僕が転校したド田舎。そこは何と、相撲好きのカエルの神様が崇められている村だった!
村を治める一族の娘・真夏と、喋るカエルに出会った僕は、知恵と知識を見込まれ、外来種のカエルとの相撲勝負を手助けすることに。
同時に、隣村で死体が発見され、もつれ合った事件は思わぬ方向へ!?
理屈っぽいが、顔は可愛い小柄な少年。
村の名家のお嬢様で、怪力大柄少女。
クセありワケあり少年少女の悩みの種は「相撲好きなカエルの神様」!とんでも設定が面白い!
青春でスポーツでミステリでファンタジーで…度:★★★★
主人公・文季は、相撲好き両親のもとで、相撲漬けの毎日を送るも、
小柄で可愛らしいため、本人的には力士になるのは無理と諦めている少年。
両親が事故で突然他界してしまい、刑事である叔父に引き取られ、
稲作が盛んな村に引っ越すことに。
ついに相撲から離れるのかと思いきや、なんとこの村、
跡取りを相撲の強さで決めるくらいの、相撲大好き村だったのです!
しかも、カエルを神様と信仰していて、このカエル神様が相撲大好きと言い伝えられており、
良い相撲を取ると、上質な米が収穫できるという…。
文季は、相撲がきっかけで、村を治める遠泉家のお嬢様・真夏に呼ばれ、
相撲を取っているカエルを目撃!
しかもそのまま、最近来た外来種のカエルに勝てるようにアドバイスしてくれと頼まれ、
なんとカエルをコーチングすることに。
訳の分からんファンタジー的事態に巻き込まれるわ、
刑事の叔父は、隣町の林で見つかった死体の捜査に関わるわで、
ひっそり目立たず暮らすライフは、諦めざるを得なくなるのでした…。
こうしてあらすじ説明していくと、なんじゃそりゃ?ですね(笑)
でもこれが、読んでるうちに違和感なく、文季はどんな手に出るんだろうと考えだすのだから、
作者の力量は恐ろしいものです。
そういえば、「虚構推理」は妖でるし「名探偵に薔薇を」は完全犯罪可能な毒薬でるし、
特殊な設定だらけだった!
恐るべきポテンシャル度:★★★★★
文季少年、相撲知識もさることながら、
精神年齢何歳?と聞きたくなるくらい、冷静で理屈っぽい。
大人も舌を巻く賢さですが、ちょっと可愛げが足りないかも?
でも、妙に鈍感な部分は、年相応の男の子でした。
カエルが相撲とっていても、驚いた後はすぐに順応し、
外来種カエルに勝てるよう、必殺技をレクチャーするのだから、
適応能力が高すぎる(笑)
その適応能力の高さで、物語中は、
相撲のコーテイングから殺人事件捜査から言い伝えの解明まで、大活躍!恐るべし!
リアル?なカエル相撲度:★★★★
毒をもつ外来種カエルを倒すために、
カエルの身体構造を考慮したうえで、相手の意表を突く必殺技を開発する文季。
カエルの足はこういう構造だから、こうすれば足技も無理じゃないとか、
今まではこういう技もあって、相撲のスタイルを考えるとこうした方がいいとか、
カエルの解剖学と相撲の歴史について、
作者はどんだけ勉強したんですか?と唖然とする内容。
「カエルだからこそできる相撲技開発」が、ノンフィクションスポーツものに見えてくる(笑)
カエル様の、変なところでおおらかな性格も面白かったです。
何気に遠慮のない文季と、不器用感たっぷりの真夏のやり取りも、クスリ。
色々と変わった設定ですが、ほっこりボーイミーツガールもあり、楽しめました!
異常な状況を奇策で乗り切る少年を待つ、意外な真相とは?
こんな村があったらちょっと嬉しい…カエルミステリをぜひ楽しんでください。