殺し屋の前に自称発明家が現れた。自分の発明したタイム・マシンで、殺害現場を目撃したという―表題作「クライム・マシン」、妻の消失に秘められた巧妙な犯罪計画を描くMWA賞受賞作「エミリーがいない」ほか、全14篇。軽妙な語り口に奇抜な発想、短篇ミステリの名手ジャック・リッチー名作選。
クオリティーの高い作品ばかりで、素晴らしい短編集!
あと1話だけ…と思いながら、読むのが止まらない!
全部面白い度:★★★★★
収録された14作品、全部面白かったです!
表題作「クライム・マシン」は、殺し屋の前に自称発明家の男が現れ、
殺し屋の犯罪を、自分が発明したタイムマシンで目撃したと言ってくる、奇抜な設定。
最初は笑い飛ばす殺し屋ですが、犯行の細部まで語る男に対し、
本当にタイムマシンがあるのではないかと疑いだし…。
SFミステリなのか、男による詐欺なのか、最後まで分からず、
意外な真相にやられた!となりました。
MWA賞受賞作「エミリーがいない」は、姿を見せなくなった女性・エミリーの夫が、
妻の行方をはぐらかすのが怪しく、周囲も疑い始め、
語り手の夫に、不可解な出来事が起こりだし…とミステリでよくある展開。
しかし、結末は何とも予想外!受賞も納得!
最後の2ページは、何だそりゃ!とつっこみました。
いちばん好きな作品です。
「歳はいくつだ」は、他の作品と違い、余命宣告を受けた男の犯罪譚。
ダークな雰囲気ながら不思議な魅力があり、結末はレイ・ブラッドベリみたいかも?
最後の騙しが快感度:★★★★★
カジノで必勝法を見つけたという男にまつわる事件を描く「ルーレット必勝法」も、
クライム・マシンと同じく、真実なのか詐欺なのかが読んでいて分からない作品。
「旅は道連れ」は、飛行機で隣り合った主婦2人が、
世間話をするうちに、とんでもない真実が明らかになる話で、
6ページの作品なのに、印象深かったです。
読んでいて思わず、うえ~?って言っちゃいました(笑)
「罪のない町」も、女性2人の会話から町の姿が明らかになる、思わせぶりな話。
同じく6ページの作品なのに、ひねりが効いて面白いのが「記憶テスト」。
無駄なく短く描く力量が、いかんなく発揮されています。
「切り裂きジャックの末裔」は、ミステリよりも犯罪小説といった感じ。
あらららら…とこちらも最後は予想外。
最も暗く恐ろしいのが「殺人哲学者」。これもショートショートですが、
うわあ~と言いたくなる作品…。
「記憶よ、さらば」は、記憶喪失の男にまつわるミステリですが、
主人公が何とも好感をいだけない人物。
でもやっぱり、話は面白いんだなぁ~。
ダークなユーモア度:★★★
冤罪で4年服役し出所した男の行動と、結果的に彼を貶めてしまった人々とのやり取りが、
意外な結末に行きつく「日当22セント」は、
最後の1ページのインパクトがすごい!
ダークなユーモアがあって、好きな作品です。
「こんな日もあるさ」と「縛り首の木」は、
ターンバックル刑事と相棒のラルフが活躍するミステリ。
ただ、活躍の仕方が予想の斜め上(笑)いちばん笑えました。
ゴシックホラー要素のあるミステリなのが、「デヴローの怪物」。
デヴロー家から逃げたとされる怪物が、
殺人事件の犯人ではないかと疑われるのですが…。
不気味な怪奇要素とミステリが融合した、秀逸な作品でした。
以上14編、どれも読み始めると結末が気になってしょうがない物語ばかり。
同じく河出文庫から出版されている、
吸血鬼探偵が活躍する「カーデュラ探偵社」もおすすめです。
ショートショートも満足度高し!
クオリティーの高いミステリを読みたい人は、ぜひ!