作者名:三津田 信三 角川ホラー文庫
何かに覗かれている──そんな気がする時は、一旦本書を閉じてください。禁じられた廃村に紛れ込み恐怖の体験をしたあげく、次々怪異に襲われる若者たち。そこは「弔い村」の異名をもち「のぞきめ」という化物の伝承が残る、曰くつきの村だった──。ミステリとホラーの絶妙な融合!
映画「のぞきめ」原作。
恐るべき2つの怪異譚からなる、戦慄の物語の結末とは?
どっちも怖い度:★★★★
作者本人と思われる作家は、あるライターに興味深い怪異の話を聞きます。
‟のぞきね”‟のぞきめ”などと語られ、
しかし詳細はよく分からない謎めく怪異。
これについて詳しいらしい、老年の民俗学者・四十澤(あいざわ)は、沈黙を守っています。
しばらくして、妙な成り行きで、
四十澤が‟のぞきめ”について書いたノートを入手した作者ですが、
そのノートを読んだことがあるライターは、
「‟あれ”が覗きにくるから、絶対に読まない方がいい」と意味深な発言をし…。
迷いつつも、作者はこの謎を突き止めることを決心。
2つの怪異譚をまとめ、語りだす…
そして、第1部・第2部と恐怖の物語が綴られるという作品です。
2つの怪異譚のタイトルは、第1部が「覗き屋敷の怪」。
第2部が「終い屋敷の凶」。
う~ん、おどろおどろしそう…。
第1部「覗き屋敷の怪」は、辺鄙な貸別荘地でバイトをする4人の若者を襲う怪異の話です。
女性のうち1人が、巡礼する母娘を目撃し、
村を訪ねるという彼女たちが気になったのか、
空き時間にその村にみんなで行ってみよう!と提案。
ハイキング感覚で楽しんでいた彼らは、恐怖の事態に直面し逃げ帰りますが、
これはまだまだ序の口で…。
第2部「終い屋敷の凶」は、四十澤が若かれしころに、ある青年と親しくなったことで、
山奥の村に赴き、とんでもない事件に出くわしてしまう、という話です。
この2つは、違う時代の同じ場所の話で、前半の恐怖の正体が、後半明かされる構成。
いやー、怖い。
そうそう、ジャパニーズホラーってこういう怖さだよね!という感じ(汗)
前半はそうでもないかなと思ったんですけど、バイトの子たちがとんでもない目にあい、
じわじわ怖くなる。最後ひぃってなります。
後半も怖いんですけど、こっちはクライマックスに、
そういう話だったの⁉と驚く展開が!
まさに、ジャパニーズホラーかつミステリで楽しめました。
ミステリとの融合度:★★★★★
呪われた村の、閉鎖的な人々と外部からの訪問者。
いわくつきの屋敷の怪異、過去のおぞましい伝承。
まさに日本の、正統派ホラーという感じなんですが…。
クライマックスに、怒涛の勢いで悲劇が起き、予想もしなかった真実が明かされます。
今まで、騙されていた!
後半は、読み返して‟なるほど~”と納得しました。
ホラーだけでなく、ミステリ要素も欲しい人におすすめの作品。
同じ作者の「黒面の狐」も、怖面白いミステリだったし、そういうのが得意な人なんですね。
澤村伊智「ぼぎわんが、来る」の2作目「ずうのめ人形」も、
ホラーミステリとして面白かったので、おすすめです。
怪談と民俗学度:★★★
日本には、数多くの怪談話があります。
元ネタというか、昔の不幸な事故や事件があって、お話がつくられるという感じですよね。
昔話からの派生だから、民俗学になるんですかね。
過去に何かがあって、人々がある行動をし、恐れや罪悪感から怪談を作り上げる。
怪談が生まれる流れがよくわかって、そういう意味でも面白かったです。
怖い、怖いんですけど…。
それだけではないホラーを読んでみたい人は、ぜひ!