作者名:高野 和明 講談社文庫
改心した悪党・八神は、骨髄ドナーとなって他人の命を救おうとしていた。だが移植を目前にして連続猟奇殺人事件が発生、巻き込まれた八神は白血病患者を救うべく、命がけの逃走を開始した。首都全域で繰り広げられる決死の追跡劇。謎の殺戮者、墓掘人(グレイヴディッガー)の正体は?圧倒的なスピードで展開する傑作スリラー巨編!
息つく間もない、スピード感に満ちた、生き様を賭けた戦い!
映画化してほしい、アクション満載のサスペンス!
スピードとアクション度:★★★★★
事の始まりは、薬物中毒の中年男性が殺された事件。
その後、発見された遺体は盗まれてしまいます。
盗難から少しして、とんでもなく不可解な事件が起き、
首都全域が、大混乱に陥る事態に!
黒ずくめの謎の男が、つぎつぎ連続殺人を犯していくのですが、
その拷問のような手法と、不思議な現象は、現実離れしていて…。
知らぬ間に事件に巻き込まれるのが、主人公・八神。
八神は、昔から不良少年で、過去に詐欺事件も起こした悪党ですが、
真人間に生まれ変わろうと、骨髄ドナーに登録。
明日は、いよいよ人のために提供を…というときに、殺人事件の最重要被疑者になってしまいます。
このまま捕まってしまっては、しばらく解放されず、
移植を待つ患者の命が…。
八神は、持ち前の逃げ足を活かして、警察から逃げきることを決意します。
逃亡中、驚きの新事実が、どんどん明らかになっていき、事態は迷走。
犯人逮捕のために力を尽くす捜査陣と、
白血病患者のために、死に物狂いで病院にたどり着こうとする八神の、
熱いドラマが、アクション満載、スピード感たっぷりで描かれています。
これは、なかなか読むのが止まらないです!
主人公も犯人も…度:★★★★
主人公・八神は、不幸な境遇から悪党になってしまいましたが、
反省して、骨髄ドナーをきっかけに、真人間に生まれ変わろうと奮闘します。
教養はないけれども、逃げ足の速さと、いざというときの機転は、なかなかのもの。
犯人・グレイヴディッガー(墓堀人)は、全身黒ずくめの、まさに処刑人といういでたちで、
中世魔女狩りの時代の、墓堀人伝説に忠実な、残酷な方法で処刑を行っていきます。
見えない炎やボウガンを操り、本当に魔物のような恐ろしさ。
主人公も、犯人も、非常に個性的な設定になっていて、
ストーリーと上手いこと絡み合っていて、面白い!
八神を襲う謎の集団の正体や黒幕、被害者たちの共通点、過去の事件なども、
思いもよらない真相で、ミステリとしても楽しめました。
まぁ、いちばん印象に残るのは、
八神の逃げっぷりと、グレイヴディッガーの暴れっぷりでしたが(汗)
そういえば、死傷者数けっこうすごいな…。
印象の変化度:★★★
最初は、怪物じみた格好の犯人が、ひどい方法で連続殺人を行う、
恐怖の殺人劇!といった印象が強かったのですが、
読み進めるうちに、何だか考えていたのと、別の方向に…。
伏線が張り巡らされた、緻密な警察小説でもありました。
最後まできっちりと驚きが用意されていて、
ある人物が迎える結末には、思わずおおっと慄き…。
でもこの作品はこの終わり方だな!とスッキリ。
ハラハラのアクションと、
生き様を変えようとあがく八神、警察の誇りをかける捜査陣などなど、
登場人物の熱いドラマがあり、
スピード感満載で、楽しめました。
どんどん展開する、緊迫のドラマ!
刑事ドラマ好きにも、アクション映画好きにも、おすすめです。