作者名:山本 弘 角川文庫
アメリカの田舎町。11歳のハロルドは、湖に棲むモンスターを呼び出す実験に夢中だ。だが、血まみれの水着を残して少女が消え、恐ろしい噂が町を駆け巡る…(「夏と少女と怪獣と」)。タイ、北部。親に捨てられ、売春を強要された過去を持つシリヤム。絶望する彼女の声に耳を傾けたのは、巨大な怪獣だった(「怪獣神様」)。怪獣との邂逅を通じ容赦ない現実を乗り越えようともがく人間の姿を鮮やかに描く珠玉の4篇。
怪獣と特異生物対策部の戦いを描く、「MM9」の外伝的ストーリー。
本作だけでも、十分楽しめます。
外伝だけでも楽しめる度:★★★
この作品、全然知らずに買ったんですが、創元SF文庫から出ている、
山本さんの怪獣小説「MM9」の外伝的な、4つのストーリーをまとめた本らしいです。
そちらを読まずにいきなり読みましたが、全然大丈夫です。
話は、独立してました。
危機的状況に陥った少年の事情と、意外な結末が描かれる「生と死のはざまで」。
少年と初恋と、忘れられない夏を描く「夏と少女と怪獣と」。
悲惨な境遇の少女が、巨大な怪獣と出会う「怪獣神様」。
怪獣だらけの密林で、ジャングルを愛する少女と都会からの探索者の冒険を描く「怪獣無法地帯」。
どの話も、怪獣が登場する、ということだけが共通点で、
それぞれ全く別々の話で、違うタイプの怪獣小説が楽しめます。
それにしても、「モンスター・マグニチュード(MM)」という表現が、面白い。
創元SF文庫の、本流の長編小説が気になります。
好きな話はどれ?度:★★★
最初の「生と死のはざまで」は、
正直、ふうんなるほど、こういう話が収録されているわけね、という感想。
まぁ面白いんですけど、あまり主人公が好きになれなくて…。
甘くないヤングアダルト小説、という感じの作品でした。
2つ目の、「夏と少女と怪獣と」は、結構好きです。
少女と少年のボーイ・ミーツ・ガールからの、
恐ろしい事件からの、緊迫のSFという展開で、
ハラハラとキュンキュンと、ミステリの混合がいい具合に。
主人公2人が可愛く、「生と死のはざまで」よりも、怪獣が身近な存在に感じられます。
3つ目の「怪獣神様」は、主人公の女の子がひたすらかわいそうなので、
読んでてつらかった…!
怪獣が、人といちばん触れ合うのは、この話です。
切なくって、うるっときた(泣)
4つ目の「怪獣無法地帯」が、個人的にいちばん盛り上がります!
怪獣だらけのジャングル、面白い!
怪獣たくさん度:★★★★★
「怪獣無法地帯」は、ある任務を遂行するために、
怪獣無法地帯と呼ばれる、危険なジャングルにやってきたエージェントたちが、
ジャングルで巨大な野獣ンボンガと暮らす少女・マリオンに協力してもらい、
奇々怪々な怪獣だらけのジャングルを、冒険する話。
水棲恐竜モケーレ・ムベムベ、怪龍ムビエル・ムビエル・ムビエル、
巨大蜥蜴のようなングマ・モネネ…などなど、
名前を聞いただけで、何それ~とときめく怪獣がたくさん!
4つの話の中で、アクションもいちばん多いです。
しかも、この旅には、驚きの秘密が…!
やっぱり、怪獣ものは、どかんどかんと盛り上がってなんぼですかね!
個人的な好みを言うと、
「夏と少女と怪獣と」の少年少女のワクワクする怪獣ストーリーと、
「怪獣無法地帯」の、ハラハラする冒険譚が、見どころかと。
全体的に展開が早く、読みやすい本です。
タイプの異なる、4つの怪獣小説。
すごく気に入る話があるかも?