作者名:中山 七里 宝島社文庫
史上初! 最終候補にダブルエントリーされ、「こっちを読みたい!」という声が続出した話題作。『このミス』ファン待望の作品が、満を持して登場!
マンションの13階からフックでぶら下げられた女性の全裸死体。傍らには子供が書いたような稚拙な犯行声明文。これが近隣住民を恐怖と混乱の渦に陥れる殺人鬼「カエル男」による最初の凶行だった。警察の捜査が進展しないなか、第二、第三と殺人事件が発生し、街中はパニックに……。無秩序に猟奇的な殺人を続けるカエル男の正体とは? どんでん返しにつぐどんでん返し。最後の一行まで目が離せない。
2作読み比べも楽しい!
大賞受賞作「さよならドビュッシー」と、最後まで争った作品!
「ドビュッシー」とは、違う中山さんの魅力が味わえます。
同一作者で違うタイプ度:★★★★★
第8回このミステリーがすごい!では、同一著者の作品が選考を上がってくる異例の事態に。
それが、「さよならドビュッシー」と「連続殺人鬼カエル男」。
一作でも大変なのに、本当にすごいですよね!
両方読みましたが、どっちも面白い!
大賞を受賞したのは「さよならドビュッシー」ですが、
私が何回も読み返したのは、「連続殺人鬼カエル男」の方。
もはや、好みの問題ではないかというレベルの高さです。
共通するのは、‟音楽の力”。
「ドビュッシー」は、辛い境遇に置かれながらも、音楽の力に導かれる少女の話。
「カエル男」は、トラウマを抱える若い刑事が、音楽によって癒されます。
こう聞くと、サイコサスペンスだけどいい話?という気もしますが、
ところがどっこい、こちらは心をえぐってきますよ~。
同じように‟音楽による癒し”を描いていても、方向性が違うのです。
でも熱い作品で、一気読みしてしまいました!これは止まらない!
社会派サイコサスペンスの傑作度:★★★★
事件は、口にフックをかけられ、
マンションの13階から吊るされた女性の遺体が見つかったことから始まります。
その犯行現場には、子どもの日記のような幼い文章の不気味な犯行声明文が。
その後も、「カエル男」の文章が添えられた、凄惨な遺体が見つかり、
犯行の残虐さと、被害者に接点が見つからないという事実が、人々の心を恐怖で蝕みます。
ベテラン刑事と組む主人公の若い刑事・古手川は、必死で捜査をしますが、
犯人は捜査陣をあざ笑うように、つぎつぎと殺人を犯し、町中がパニックに。
そんなとき、捜査中に、ある青年の保護司を務めるピアノ教師・有働さゆりと知り合い、
彼女の力強い演奏に、癒されていきます。
古手川には、悔やんでも悔やみきれない過去の出来事があり…。
残酷極まりない死体、子どもの日記みたいな犯行声明文、
まるでバラバラな被害者の選び方の謎、司法と精神疾患の闇、
合間に挿入される、犯人の救われない幼少期。
緊迫のシーンと、ハラハラする描写が続きます。
不気味で凄惨な事件によって、町が恐怖のどん底に突き落とされたとき、
警察への不信が爆発してあわやの事態に!
後半の波乱から、一気に驚愕の真実&恐ろしい一騎打ちかと思いきや、
まだその先にも、驚きが用意されていて…
すごい話だったと思ったら、そこでもまだ終わりじゃないんですよ~という、
もう、お腹いっぱいです状態になる作品でした。
古手川刑事の成長に期待度:★★★
主人公の古手川和也刑事、他の作品にも、結構出ます。
中山さんのシリーズに出るキャラって、他作品への出張率が高い気が。
ファンにはうれしいですね。
古手川刑事、最初は好きな性格ではなかったんですが、読み終わるころには、
これから頑張って成長するんだよ~と応援したくなりました。
ただ者じゃなさすぎる上司に、今後も鍛えられるでしょう!
続編「カエル男ふたたび」も、ぜひ一気にどうぞ。
ドラマ化もされた、社会派サイコサスペンスの傑作!
心臓に悪~い刑事小説が読みたい人に、おすすめです。