作者名:森見 登美彦 角川文庫
小学四年生のぼくが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎の研究を始める。未知と出会うことの驚きに満ちた長編小説。
第31回日本SF大賞受賞作
今回の森見作品の主人公は、大人顔負けの研究少年(ただし天然)!
瑞々しい魅力に満ちたひと夏の冒険は、忘れがたい余韻を残す…。
主人公かわいい度:★★★★
主人公の少年・アオヤマくんが暮らす街で、
突然たくさんのペンギンが目撃されるという、事件が起きます。
すでに研究家としての素質を開花させている、聡明なアオヤマくんは、
この謎を解こうと決意!
そんな彼の前に、歯医者のお姉さんを始め、新たな不思議がつぎつぎと現れて、
忘れられない夏が始まる…そんな物語。
主人公のアオヤマくんは、とても賢く勤勉で、本人もそれを自覚しています。
けれど素直で謙虚で、ずれているところもあるので、友達になりたいと思わせる子。
正直言って、真面目過ぎて面白くなっちゃってるタイプ。
だんだん、主人公が子どもの小説は、感情移入がしにくくなってきたんですけど、
この本は、真面目でちょっと変わったアオヤマくんの一人称が面白くて、すいすい読めました。
(森見作品って、クスッと笑える語り口が好きです。)
同級生のいじめっ子を口で打ち負かしたあと、
大人げなかったと反省したり(大人じゃないだろと突っ込まれる)。
自分がなぜお姉さんの胸に惹かれるのか謎だと、大真面目で友達に語ったり。
最後には、多くの人々を巻き込む、とんでもない大事件に発展し、
アオヤマくんとお姉さんは、予期せぬ大冒険をすることに!
一生忘れられない体験をし、切なく甘酸っぱい思いもしますが、
アオヤマくんは、このまま変わらず成長して、大物になっていただきたいです。
子どもの目線のキラキラ度:★★★★
町に突如現れた、たくさんのペンギンたち。
ミステリアスな歯医者のお姉さん。
同級生が見つけた、草原に浮かぶ不思議な物体。
誰も見たことがないような、不気味な生き物の目撃談。
突然目の前に押し寄せてきた、謎謎謎!
大人だったら、興奮すると同時に不安になって、どこかに相談してしまうでしょうが、
子どもは、なかなかそうはならない。
アオヤマくんと友達、お姉さんは、これらの謎を解こうと研究を始めます。
今まで進めていた、水路がどこへ続くのかという研究も行いながら、
森を探検したり、実験と観察を繰り返したり。
瑞々しい文体で、キラキラする夏が描かれていて、こちらもワクワクしてしまいました。
子どもの頃って、こんなことがやたら楽しかったんだよなぁとか、
夏休みが来るたびに、何かが起きる、冒険が出来るとか思っていたんだよなぁとか、
ちょっと浸っちゃったり(笑)
ちょっと大人になる切なさ度:★★★★★
ワクワクする、子どもの冒険物語なんですけど、成長物語でもあるわけで…。
アオヤマくんも成長します。
しますが…大人になるための体験って、切なくもありますよね~。
彼は、どんどん経験して学んで、すごい人物になるでしょうとも!
読み終わった後も、彼を応援してしまう作品です。
友達も、お姉さんも、大人たちも、みんな魅力的で、
もちろんペンギンも可愛さ満点。
アニメ映画の、よちよち歩きがたまらなかった…‼
個人的に、夏に入道雲とか見ると、何だか読み返したくなる作品です。
映画のペンギンが、めちゃくちゃ可愛い…!
小説も映画も、どっちもおすすめの、傑作SF成長物語です!