作者名:澤村 伊智(いち) 講談社文庫
宮部みゆき、綾辻行人、貴志祐介、錚々たる作家が選考委員を務める新人文学賞を獲得した「僕」。隣には最愛の妻・キリカ。作家デビューは順風満帆かと思われたが、友人が作品を曲解して執拗な嫌がらせをはじめる。しかしその結果、僕は妻のとんでもない秘密を隠し切れなくなり…これぞ最恐のサイコ・ホラー!
もちろん、これは創作ですよね(汗)
書評レビューを書くときは、よく考えた方がいいかも…?
意外な設定度:★★★★
澤村作品と言えば、ホラー大賞をとって映画化された「ぼぎわんが、来る」がまず浮かぶかと。
今作は、「ぼぎわん」受賞の舞台裏の話ということになっています。
妻と離婚し、働きながら小説を書き、ついにホラー大賞を受賞した作者。
小説を書く仲間4人にも祝福され、
周りに内緒で再婚していた妻・キリカも、とても喜んでくれます。
しかし、小説仲間の一人が、異様な考え方で作者に嫌がらせをするようになり、
作者とキリカは、徐々に追い詰められていきます。
そして、決定的な事件が起きた後、物語はとんでもない方向に動き出して、
「うわっ…。」とひいてしまう混沌とした事態に!
迫る物の怪の恐怖を描いた「ぼぎわん」シリーズでも、
人間の怖さ醜さが描かれていたので、
サイコホラーも面白いでしょう!と手を出したんですけど、
面白いけど、わーお、こういうシーンも書くんだ…という驚きの方が強いかも?
作者の苦悩がリアルに分かる度:★★★
ホラー大賞を受賞し、出版に向けて準備をするシーンがあるのですが、
改稿・入稿・初校ゲラを校正・著者校正・再校ゲラをまた校正して…などなど。
た、大変…(汗)
多くの人がチェックして、ちょっとでもおかしい部分があったら、徹底的に直すんだなぁ。
こんな大変な時に、友人がストーカー化したら、たまらないですね。
作者も、「いよいよ本を出版する」というプレッシャーを感じるうえに、
嫌がらせされて神経ボロボロ。
支えようと妻キリカは頑張りますが、ついに第1章の終りに事件が!
キリカさん、恐ろしい秘密うんぬん書かれていますが、いいお嫁さんなんですよね。
この人に、一体どんな真実が隠されているのか、ぜひ、確かめてみてください。
嫌がらせ行為がエスカレートし、事件が起きた後、物語は予想外の展開に向かい…
序盤のストーカーに対するイライラ何だったっけ?という感じになります。
序盤のイライラを我慢したら、後はひたすら恐怖とご対面!
サイコホラーも怖い度:★★★
「ぼぎわん」シリーズは、現在4作目まで読みましたが、どれも怖く面白かったです。
どの怪異も不気味で、人間に対して容赦がない…。
個人的には、やっぱり「ぼぎわん」シリーズの方が怖いし、作品としても好き。
でも、サイコホラーのこちらも楽しめました。
「ぼぎわん」シリーズは、どの作品にも、人としてどうなの?という人物が何人か登場しますが、
今回は、こういう人たちがメインだから!という勢いで出てきます。
怪異の恐怖を描く「ぼぎわん」に対し、人間の暴走の恐怖に重きを置いたのが本作。
痛い目にあいたくなかったら、気を付けて生きていかないとね…と思わせる作品でした。
文庫コーナーにあった澤村作品しかチェックしていなかったんですけど、
単行本もチェックしてみたら、ホラーミステリやホラーSF集など、
色々なタイプの‟怖い”小説を書いてみえるんですね。
どれも怖面白そうで、そのうち読みたい…!
「ぼぎわんが、来る」を読んだ方、
全く異なる視点で楽しめるかもしれません。