作者名:ハル・クレメント 創元SF文庫
液体メタンの海とアンモニアの氷に覆われ、高速自転で赤道部が膨らんだ巨大惑星メスクリン。赤道部で3G、極地で700Gのこの星は、ある緯度以上への人類の進入を許さない。地球人は南極で離陸不能となった無人調査ロケット回収のため、原住生命と取引きをした。体長40センチ、36本肢のメスクリン人は、なぜ無報酬も同然でこの危険な仕事を引き受けたのか?ハードSFの傑作!
特殊な形状のために、エリアによって重力負荷が変化する、メスクリン星。
異なる概念を持つ、人類とメスクリン人は、協力して探索を完遂できるのか?
そっちが主人公なの?度:★★★★
舞台となる惑星、メスクリン星は、
液体メタンで、大きく水位が変化する海と、アンモニアの氷に覆われ、
地球の700倍(‼)の重力をもっています。
しかも、形が他惑星のように滑らかな球状ではなく、
極地と赤道部分では、700Gと3Gという、大きな重力差が生じているという、
人類には、なかなか想像しにくい惑星。
調査のために、高価な機械を積んだロケットを飛ばしたのですが、
人類が踏み込めない重力のエリアへ落ちてしまったため、
回収のために、あるメスクリン人のグループに、協力してもらうことに。
接触したメスクリン人は、体長40センチでハサミを持つ、
36本肢の芋虫のような形状をした種族で、
飛行士ラックランドが親しくなったのは、交易を生業とするブリー号船長・バーレナン。
勝気な仲間を率いるバーレナンは、非常に好奇心旺盛で、
人間の知識や技術が、気になって仕方がありません。
ラックランドと、バーレナン&仲間たちが、協力して、
調査ロケットまでたどり着こうと冒険に赴く物語ですが、主人公は異星人バーレナン!
表紙イラスト見た時は、宇宙服着た人間が目立っていたので、
手前に描かれている、小さな生物が主人公と思いませんでした(汗)
でも、探求心に満ちて賢くて、ときに可愛いバーレナンは魅力的!
不思議な惑星の波乱の冒険度:★★★★★
何といっても、メスクリン星の特殊さが、
冒険を複雑に、かつ面白くしています。
バーレナンたちの故郷は、非常に重力がかかるエリアで、
彼らには「投げる」とか「跳ぶ」という概念がなく、
高所からの落下に、非常に強い恐怖心を抱いており…。
人類の考え方とギャップが大きく、
ときには人間にとって何でもないことで、わたわたと大混乱!
しかもメスクリン星は、自分の居住区以外では、重力の違いもあり、
体つきや文化が全く違う種族が暮らしているうえに、交流がないので、
探索の旅を続けるほどに、驚きの事態に陥ります。
不思議な惑星に住む、不思議な異星人の、不思議な冒険の旅が楽しめる作品でした。
異星人との友情度:★★★
飛行士ラックランドと、船長バーレナンは、
最初は言葉も通じませんでしたが、親交を深めるほどに、
少しずつ、お互いを理解していきます。
人類と、異星人の交流が、「20億の針」と同様楽しめる作品。
主人公の異星人・バーレナンが、何とも魅力的です。
序盤に怖い思いをするシーンがあるのですが、
それからのリアクションが、可愛い…!
道中パニックに陥って、慌てふためく船員たちも、笑い事じゃないなと思いながら、
なんか愛嬌があると思って、読んでしまいました。
「20億の針」のハンターもそうでしたが、たまに抜けてて、
好感が持てる異星人が活躍する、という部分は、ハードSFなのにほっこりします。