作者名:山吹 静吽(やまぶき せいうん) 角川ホラー文庫
山のお屋敷は、人さ、とるのだぞ――民話伝承を取り込んだ壮大な超大作!昭和20年。疎開先で妹・真那子が神隠しに。11歳の少年・遠野心造は、妹を探し巨大な屋敷に足を踏み入れる。謎の犬「しっぺい太郎」に助けられ、怪異と戦う心造の胸には、いつしか紅蓮の野望が芽生え――第24回ホラー大賞優秀賞受賞作
物の怪がうろつく屋敷に、霊宝というアイテム。
とびきり不気味なダンジョンを冒険しているみたい!
RPG好きは、楽しめるかも?怖いですけどね…。
物の怪、伝承への愛を感じる度:★★★★★
妹を探すため、幽霊屋敷に入り込んだ主人公・心造(しんぞう)を襲うのは、
雪女や河童、のっぺらぼうといった、馴染みのある物の怪たち。
しかし、怖い!
こんなに不気味な存在だったっけ?と、遭遇するたびにびっくり。
他の小説や漫画で描かれる、愛嬌のある存在とは全然違うけれど、
実際に会ったらこういう風なんじゃないかと思ってしまうくらいの存在感。
こんなのに遭遇したら、全力で逃げますとも!
人ならざる者への恐怖を忘れさせません。
作者の、物の怪への愛ゆえなのかも。
心造が迷い込んだ幽霊屋敷と、その来歴も、
屋敷内にある霊宝と、これらに関する数々の伝承も、
しっかり、民俗学を調べて書いたんだろうなぁと感じさせる、
真に迫るものになっています。
本当に、妖怪の伝承とかが、好きなんだろうなぁ~。
不思議アイテムに、ときめいちゃう度:★★★★★
屋敷のあちこちにあるのが、摩訶不思議な霊力をもつ宝です。
これを用いて、どう生き残るのかが見どころの1つ。
強力な武器となるものも、生活するうえで便利なものも、
たくさん出てくるんですよ、これが!
恐ろしいものから、思わず欲しくなっちゃうものまでいっぱい…全部で何個あるんだろう。
動物の言葉が分かる頭巾やら、妖の棲む着物やら…。
蓋を開けるたびに中身がつまっている弁当箱、すごい欲しいよう。
こういうアイテムを使って、幽霊屋敷を進むのが、
ダンジョンを冒険する、RPGゲームみたいで、無性にワクワクする!
でも、妖怪がガチで怖いので、人がプレイするのを見るくらいにしておきたいです…。
時代背景とのシンクロ度:★★★
時は戦時中、主人公・心造は軍国少年。
人間たちの世も恐ろしい時代で、全体に悲しさ、やるせなさが漂います。
しかし、こう言っては何ですが、この時代だからこそ作品全体に逃げ場のない閉塞感が生まれ、
恐怖とハラハラ感が増しているように感じます。
戦争と、戦争に対する人の考え方が、
この物語を大きく動かし、驚きの展開につながるのです。
ただ幽霊が出るだけの屋敷じゃない。
‟迷えるもの” は、‟帰る” ことができるのか…胸を打つラストです!