作者名:恩田 陸 講談社文庫
鮫島巧一は趣味が読書という理由で、会社の会長の別宅に2泊3日の招待を受けた。彼を待ち受けていた好事家たちから聞かされたのは、その屋敷内にあるはずだが、10年以上探しても見つからない稀覯本(きこうぼん)「三月は深き紅の淵を」の話。たった1人にたった1晩だけ貸すことが許された本をめぐる珠玉のミステリ。
本好きのための、連作短編ミステリ!
気に入ったら、シリーズの長編もどうぞ。
本への愛が感じられる度:★★★★★
4話とも、「三月は深き紅の淵を」という本をめぐる話です。
第1章の「待っている人々」は、本がたくさんある屋敷の中で、長年見つからない本を探すミステリ。
第2章の「出雲夜想曲」では、女性編集者2人が幻の本の作者を推理しに、出雲へ旅をする。
第3章の「虹と雲と鳥と」は、悲惨な過去と、2人の少女の痛切なミステリ。
第4章の「回転木馬」は、小説を書く者の視点と、挿入される物語からなる話。
本をめぐる、本が主役の、本好きのための作品でした!
「三月は深き紅の淵を」というタイトルが素敵ですが、
この本に関連するシリーズのタイトルも、何ともそそられる…!
実際に、こんなタイトルの謎の稀覯本があったら、そりゃ読んでみたいですとも~。
がっつりミステリ度::★★★
短編ながらも、しっかりとしたミステリです。
屋敷のどこに本があるのか。
何人かの候補者の中に、作者はいるのか。
少女が遺したノートに、込められたメッセージとは。
1つ1つが、面白いです。
いちばん印象深くて、心が揺れたのが第3章。
本に関するミステリ、ということで秀逸なのは第2章かも。
第1章は、主人公は本のありかに悩みつつも、素敵な屋敷で本好きの人たちと過ごしていて、雰囲気がとても好きです。
長編も気になる度:★★★★
何冊か、シリーズの長編が出ています。
本作第1章では、「三月は深き紅の淵を」は4部構成で、第1部は「黒と茶の幻想」であるとされています。
「黒と茶の幻想」は、上下巻の長編小説として、出版されています。
第4章で挿入される物語は、「麦の海に沈む果実」で1冊の本に。
謎めいた学園で起こる殺人事件の話で、主人公の理瀬は「黄昏の百合の骨」にも出演。
他にも、アンソロジーに短編が収録されています。
この作品の雰囲気が気に入ったら、どんどん手を出してみるのもいいかもしれません。
本作品も、シリーズの長編も、美しく幻想的。
気に入った方は、「麦の海に沈む果実」をおすすめします。