作者名:大沢 在昌 集英社文庫(角川文庫:新装版もあり)
ムービーアイランドと称される人工島を拠点に映画産業が隆盛を誇り、一方で「ネットワーク」と呼ばれるテレビ産業が人々の生活を支配する近未来、新東京。報道を牛耳るネットワークで視聴率のために殺人予告が横行するなか、引退した私立探偵のヨヨギ・ケンはかつての友人の依頼を受け、新東京に舞いもどる。予告された殺人は仕組まれた陰謀なのか? 調査を進めるケンが行き着いたのは、人工島・ムービーアイランドだった――。パンドラの匣を開けたケンに容赦の無い運命が迫る。深まる謎、鮮烈なアクション。一気読み冒険エンターテインメント! 『B・D・T [掟の街] 』続編。
今度の舞台は、映画産業に沸く人工島。
戦いに戻った探偵ケンを待つのは、巨大な闇!
さらに舞台が変化度:★★★★★
前作は、近未来の、一部がスラム化した東京で、
ならず者や背後の巨大組織と戦う物語でした。
今作は10年後の、さらに変化した新東京が舞台です。
ホープレスチャイルドといわれた混血児の待遇も、多少は改善し、
東京の街も見た感じは穏やかで清潔。
ケンと一時、タッグを組むのは、何とホープレスチャイルド出身の警官。
まぁ平和になりましたね…と思ったら、いやいや、やっぱり色々あるのが東京でした。
ケンは小笠原に移住し、静かに暮らしていたのですが、
愛する女性が病死し、失意の日々。
そこへ、前作の依頼人、人気作家の美青年ヨシオ・石丸がやってきて、
危険が迫っている、妻の世界的女優アマンダ・李を守ってほしいと依頼してきます。
迷ったケンですが、戦いへと赴くことを決意。
アマンダがいるムービー・アイランドについての情報を得るために、再び東京へ。
そこで、前作で活躍した刑事・池谷に再会し、
テレビ業界を騒がせる、‟双子座キラー”を追うことになります。
現在の日本では、テレビ業界と映画産業が強い力をもっているのですが、
業界の暗部では、とんでもない事態が進行しているようで…。
途中から、ムービーアイランドと呼ばれる映画産業の聖地である、
原発施設のある人工島へ潜入します。
東京でも激しい展開でしたが、こちらも負けじと陰謀&アクション!
前作も近未来ですが、荒廃したエリアでのハードボイルド探偵小説、
というのがメインでした。
今作は、ちょっとディストピアものの雰囲気が…。
見た目は優雅な人工島とか、放送ネットワークの変化とか、未来感が増したからかな?
テレビ業界では、恐ろしいやらせが行われており、
隠遁していたケンも、復帰して今の状況にびっくり。
前作よりも、ボリュームも事件の規模もアップし、
読むのが止まらない、ハードボイルドアクション大作となっています。
「B・D・T」も傑作だけど…個人的には、本作の方が面白かった…!
ケンはまだ30代だし、もっとシリーズ出たらいいのにと思います。
変わらずアクション度:★★★
舞台が変わっても、ケンがある事情で一時期探偵をやめていても、
アクションは変わらないです!
今作も、銃撃戦に爆弾に、またしてもロケットランチャーが…!
日本ですよね?という暴れっぷりは、健在でした。
つぎつぎ襲われるせいで、ブランクがあったケンは、
あっという間に昔の勘を取り戻すのですが(苦笑)
戻さないと死んじゃう事態ばかりだし…。
けっこう大作ですが、スピード感があるし、ハラハラし通しなので、
読み終わるのは、意外と早いかも。
隠された狂気度:★★★★
途方もないお金が動く、映画産業。
映画とテレビネットワークとのパワーバランス。
原発のある島に、封じ込められた諍いの種。
マフィアのビジネス、映画界の帝王、大女優。
巨大な富を生む世界だからこそ、水面下でとんでもないことになってるみたいです!
火種が一気に爆発する、クライマックスは圧巻。
最後に暴き出される、ある人物の狂気にはゾッとしました。
前作のメンバーが活躍するのも、嬉しい!
壮大なスケールの、ハードボイルドアクション作品です!