作者名:シャーリィ・ジャクスン 創元推理文庫
人間の裡に潜む不気味なものを抉り出し、独特の乾いた筆致で書き続けたシャーリイ・ジャクスンは、強烈な悪意がもたらす恐怖から奇妙なユーモアまで幅広い味わいの短編を手がけたことでも知られている。死後に発見された未出版作品と単行本未収録作を集成した作品集Just an Ordinary Dayより、現実と妄想のはざまで何ものかに追われ続ける女の不安と焦燥を描く「逢瀬」、魔術を扱った中世風暗黒ゴシック譚「城の主」、両親を失なった少女の奇妙な振るまいに困惑する主婦が語る「『はい』と一言」など、悪意と妄念、恐怖と哄笑が彩る23編にエッセイ5編を付す。
‟魔女”と呼ばれた作家の短編集。
美しく、恐ろしく、ときにはユーモアも!
23編の満足度:★★★★
妄想、幽霊、身近にいる人への恐怖。
恐ろしいけれども、ときに暗い笑い、歓びを感じてしまう。
そんな短編が、23編も収録されているという、贅沢さ!
有名な短編「くじ」は収録されていませんが、他の短編も面白いです。
「なんでもない日にピーナッツを持って」では、結末に驚き。
「悪の可能性」「メルヴィル夫人の買い物」は、人って…と思い。
「ネズミ」「お決まりの話題」「アンダースン夫人」は、怖っ!となりました。
「喫煙室」は、ユーモアがいい!
「レディとの旅」も、何だか心に残る話でした。
たくさん収録されているので、お気に入りを見つける楽しさがあります。
癖になる作家度:★★★★★
「丘の屋敷」「ずっとお城で暮らしてる」などの、長編ホラーから読んだのですけれど、
これがまた、癖になるというか。
‟魔女”と呼ばれた理由、何となく納得。
「丘の屋敷」で感じた不安と恐怖も、
「ずっとお城で暮らしてる」を何回も読ませる、病んでいるがゆえの中毒性も、
もろもろ入っている、素敵な短編集です!
エッセイも読めるお得度:★★★
23編に加えて、エッセイ5編も読めるというお得さ。
エッセイは、自らの家庭生活を題材にしているらしく、
子どもに振り回され、母親として閉塞感を感じ、ご近所に気を使って…
という経験が描かれています。
けれども、普通のエッセイとは、どこかが違う…。
何だかやっぱり、シャーリィ・ジャクスンの物語なんですよね。
ユーモアのある短編も、エッセイも好きになりました。
シャーリィ・ジャクスンらしさ、というのはやはり、謎の中毒性があるんでしょうか。
ハマる人は、とことんハマる作家!
短編・長編、どちらも魅力的です。