作者名:三木 笙子(しょうこ) 講談社文庫
神隠し伝説が残る田舎町の高校に転校してきた久守徹は、天狗と呼ばれ人に遠巻きにされる孤高の少年・野見大地に誘われ廃部寸前の地学部に入部する。風のようにあらわれ石と戯れる大地に徹は惹かれるが、大地にはまだ誰にも明かせない秘密があった。それは人の記憶を内にとどめ後世に伝える「決壊石」の不思議だ。大地は初めてその秘密を徹に打ち明ける……。
水晶、瑪瑙、琥珀―妖しく美しい輝きの鉱物が過去の真実を照らし出す。そして判った驚愕の出来事とは?
*単行本では、「決壊石奇譚 百年の記憶」 ↓
不思議な力をもつ石をめぐる、美しいファンタジック・ミステリー。
2人の友情に、心が洗われます。
透明感のある文章が魅力!
鉱物の妖しい魅力度:★★★★
「決壊石」とは、人の強い感情に触れて記憶を残し、
不思議な力をもつようになった石のことです。
望む景色を見せたり、銀を発光させることができたり。
何だか魅力的ですが、その力ゆえに、問題がおきたりもするわけで…。
決壊石が映し出す世界へ取り込まれてしまったり、
その強すぎる力に、あらがえなくなってしまったりなど、不測の事態が。
作品には、さまざまな石が出てきます。
水晶・琥珀・翡翠…。
これらの美しい石が不思議な力をもつなんて、ファンタジー好きにはたまりません!
この作品の透明感ある雰囲気と、純粋な少年たちの友情と、
神秘的な石の魅力がマッチして、何とも美しい!
こんな息子が欲しい度:★★★★★
真面目で誠実な転校生・徹と、人に避けられるけど実は優しい少年・大地。
2人とも、すごくいい子なんですよね~。
心が澄んでるんだな、と読むほどに思います。
とくに徹。どう育てたら、こんな子に成長してくれるのだろうか…。
この2人が友情を育むわけだから、何だかもう保護者目線で応援したくなります!
決壊石が不思議な力を見せる場面が、神秘的で好きなんですけど、
徹が大地の家に行ったり、おじいさんと食卓を囲むシーンなんかも、
ほっこりして楽しめました。
緊迫の事態が起きたりもするのですが、2人が住む田舎町の、
穏やかな優しい空気が感じられる作品です。
綴られた文章を、大事にじっくり読んでいきたい物語。
時を超える切なさ度:★★★★
不思議さ美しさだけではなく、作品で語られるのは、人の心の切なさ。
石の力で、過去の記憶が受け継がれていったとき、
受け取った人間の負担にもなってしまうのです。
正しく受け取られなかった人の気持ちというのは、悲しいものですね…。
大地の祖父の記憶、徹の父の秘密。
徹と大地は、石に秘められた本当の気持ちを、解き明かすことができるのか。
2人が、どんどん心配になる~。
後日談とか、読みたいな…。
日常が舞台のファンタジーなので、ファンタジーは世界観が分かりにくくて…という人におすすめです。
優しい気持ちになれる、素敵な物語!