作者名:ケイト・ミルフォード 創元推理文庫
12歳のマイロの両親が営む小さなホテル〈緑色のガラスの家(グリーングラス・ハウス)〉。ある冬の日、5人の奇妙な客が現れる。彼らは全員が滞在予定日数を告げず、他の客がいることに驚いていた。なぜ雪に閉ざされたホテルにやってきたのか? 客の誰かが落としたと思しき、古い紙に描かれた海図を手がかりに彼らの目的を探ることにしたマイロ。だが客たちの謎と巻き起こる数々の事件は、ホテルに隠された秘密に繋がっていた! MWA賞受賞、ほっこりあったか聖夜の物語。
奇妙な客が来てから、盗難騒ぎに停電に、トラブル続き!
客と地図とホテルの謎を解くことにした、マイロの予想外の体験とは?
子どもの頃の、懐かしい気持ちに浸れる、ほっこりミステリです。
ワクワクする少年目線の物語度:★★★★★
主人公マイロは、12歳のやや神経質なところがある、でも基本素直な少年。
両親と3人で、経営する小さなホテル「緑色のガラスの家」に住んでいます。
丘の中腹にぽつんと立っているこのホテル、密輸品が行き来する町で営まれていたため、
顔なじみの密輸人たちも利用。
冬休みは毎年しばらく客が来ないはずなのに、
なんと初日に5人もの、新規のお客がやってきたのです。
派手な靴下のヴィンジ氏、青い髪の若い女性ジョージィ、
老婦人ヒアワード、大学教授ガワ―ヴァイン、赤い髪の若い女性クレム。
この5人、お互いに他の客がいることにびっくりしているし、
謎めいた言葉を言うし、滞在日数を誰も決めないし…。
何だか、みんな訳ありで、何かを探っているみたい!
誰かが落とした海図を拾ったマイロは、
たまたま手伝いに来ていた料理人の娘・メディとともに、
ゲームのキャラクターになりきって、謎を解くことにします。
途中、泥棒騒ぎがあったり、停電したり、さらなる予期せぬ客が来たり、
マイロも両親も5人の客も、混乱する事態が起きる中、
徐々に、ホテルと、ある伝説的な人物の秘密が明らかになっていくのですが…。
謎のお客の不思議な言動に、意味ありげな海図。
自分の家であるホテルに、秘密の匂いをかぎ取って興奮するマイロ。
児童文学でありそうなシュチュエーション+伏線ありのミステリ、という作品で、
子どもの頃のワクワクが、少し蘇るような感じを味わえるかも。
素敵な舞台が読んでて楽しい度:★★★★
古いおんぼろホテル、などどマイロは言いますが、
「緑色のガラスの家(グリーングラス・ハウス)」は、
3階には緑の、4階には青い、
5階には黄色や緑が混ざるステンドグラスが踊り場にあり、
古いものが詰め込まれた屋根裏部屋や、暖かそうな食堂があり、
お客は大体、ケーブルカーを利用して丘を登ってたどり着くという、
雰囲気たっぷりの素敵なホテルです。
世間とは隔絶された、秘密が隠されている古いホテル。
謎だらけの訳ありそうなお客と、彼らが夜1人ずつ語る物語。
少年少女が謎解きに走る、クリスマスの夜。
こういう、いかにもな設定…ノスタルジックな空気があって好きです。
たまには読みたい…こういう作品度:★★★
ミステリ、というと、コージーミステリを選択しない限り、
基本は愛憎入り混じったドロドロ殺人劇。
まぁ、それが面白いんですけど(汗)
あまりズドーンとくる衝撃のミステリばかり読んでいると、
お口直しじゃないですけど、たまには、
心温まる可愛いミステリが読みたくなる時があります。
そういうときに、ぴったりの作品かも!
養子であるマイロの悩みと成長、家族の絆が描かれ、
伏線が張ってある、本格派のミステリでもありますし。
児童文学まで戻らなくていいけれど、少し懐かしい面白さを楽しみたい、
というときに、ちょうどいい作品だと思います。
丁寧に綴られた、大人も楽しめる、少年の謎解きミステリ!
優しい気持ちになれる本です。