作者名:ピエール・ルメートル 文春文庫
狂気に駆られて逃亡するソフィー。聡明だった彼女はなぜ全てを失ったのか。悪夢の果てに明らかになる戦慄の真相とは。
ソフィーは怯えていた。かつては優秀なキャリアウーマンだった彼女には秘密があった。ときに奇行を起こし、そのことをまるで記憶していないのだ。そのせいでソフィーは職も地位も失ったのだった。自分は正気を失ったのか。恐怖を抱えながらも、高名な政治家の家でベビーシッターをつとめるソフィーだったが、ある日、決定的な悲劇が訪れ、彼女は恐慌にかられて逃亡を開始した。自分は人を殺したのか? 自分は狂気に捕らわれてしまったのではないのか? 恐怖と混乱の果てに、驚きの展開が!
とことん悪夢的状況!
追い詰められ続けるソフィー。運命を逆転させることは出来るのか?
怖いけれども、読むのが止まらない…そして、まさかの展開!
序盤から怖いよ!度:★★★★
若く美しく聡明で、優秀なキャリアウーマンだったソフィー。
夫と幸せに暮らしていたはずなのに、じわじわと異変が起き始め、人生が激変。
物語は、すべてを失った彼女が、ベビーシッターの仕事をしているシーンから始まります。
そこで事件が起き、彼女の逃亡が始まり、
次第に過去に何が起きたのかが、明らかになっていく…。
彼女の転落の原因は、記憶の混乱が起きたことでした。
予約した日を別の日と勘違いした…買ったものを探し出せなくなってしまった…
そういった症状がどんどん悪化し、家庭でも仕事でもトラブルに。
そして決定的な事件が起き、彼女はついに逃亡者になるのです!
一体、何が起きたのか、読者としては非常に気になるところ。
若年性アルツハイマー?何らかの精神疾患?
ハッキリしないまま、ソフィーの立場は加速度的に悪くなっていきます。
第1部は、本当に息がつまりそう!
ただ、ソフィー、混乱し泣き叫びつつも、タフな女性なので、応援したくなりますね。
そして第2部からは、怒涛の新展開!な、なんじゃそりゃ~という事態に!
第3部、第4部と、おいおいおいおい!という予想外の展開に驚き、後半はもう止まれず。
序盤以降は、すごいスピードで、物語の様相が変化する作品でした。
やっぱり、ルメートルは面白いです!
予想外すぎる展開度:★★★★★
紹介文を読んで、どんどんソフィーが追い詰められて、
最後に何が彼女を蝕んでいたかが明らかになるけれども、もう悲劇はどうしようもなくて…
という、ひたすら悲惨なイヤミスなのかなぁ、なんて予想していました。
ソフィーがひたすら追い詰められて可哀そう、というのは当たっていたのですが、
その後の展開が予想外で、読んでいて、別の意味で「ひいっ!」ってなりました。
まさか、こんな物語だったとは…。
カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」「傷だらけのカミーユ」「わが母なるロージー」。
ゴンクール賞・英国推理作家協会賞を受賞した「天国でまた会おう」のシリーズ。
……そういえばこの作者、展開を予想できた作品なんて、1つもなかったな…。
容赦なく残酷で、緻密に考えこまれていて、登場人物が魅力的で、
でもとにかく心臓に悪い傑作ばかりの作家さんです。困ったもんです(笑)
アレックスに負けてない度:★★★
日本でまずヒットしたルメートル作品といえば、「その女アレックス」。
これは確かに、めちゃくちゃ面白かったです。
ストーリーもさることながら、アレックスの存在感が、圧倒的でした。
存在感とタフさ、ソフィーは、アレックスといい勝負してるかも!
「死のドレスを花婿に」は、「その女アレックス」の前に書かれた作品で、
ソフィーは、アレックスの原点となる、なんて紹介文が帯に。
これはもう買うしかない、なんかタイトルも表紙も怖面白そうだし!と思い購入したのですが、
ただただ嫌なだけのサスペンスではなくて、
ソフィーは不幸に追い詰められるだけの女性ではなくて、楽しめました。
ソフィーとアレックス、この2人の女性の物語を読み比べると、
よりそれぞれの作品を楽しめると思います。
もちろん、まったく関係ない話なので「その女アレックス」を読んでいない人にも、おすすめ!
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズほど、スプラッタではないし(汗)
ピエール・ルメートル作品に、はずれなし!
ハラハラの読書体験をしたい人は、ぜひ!