作者名:桜庭 一樹 角川文庫
東京・六本木、廃校になった小学校で夜毎繰り広げられる非合法ガールファイト、集う奇妙な客たち、どこか壊れた、でも真摯で純な女の子たち。体の痛みを心の筋肉に変えて、どこよりも高く跳び、誰よりも速い拳を、何もかも粉砕する一撃を――紡徨のはて、都会の異空間に迷い込んだ3人の女性たち、そのサバイバルと成長と、恋を描いた、最も挑発的でロマンティックな青春小説。
廃校で繰り広げられる、ガールファイト。
3人の女の子の、魂が吠える!
まゆの不安定度:★★★★
廃校になった小学校のグラウンド。設置された大きな檻の中で行われる、
いわゆる泥レス(というか泥格闘技?)。
そこで戦う、訳ありの女の子たちの物語。
この非合法ガールファイトには、何人もの少女が所属?しているようですが、
この作品では、その中の性格も容姿も事情もバラバラな、3人の少女をメインに描いています。
昼は学校に通わず、バイトをして過ごし、
夜になると廃校の檻に集まり、自分でもどうしたらよいのか分からない焦燥を持て余しながら、
観客の欲を満たすためにバトルを繰り広げる…。
そういうと、何だか暗そうですが、日中仲良く格闘技の練習をしたりと、
少女と関係者の男性たちはけっこうアットホーム?
ギャグ担当みたいな男子が、不憫です(笑)
最初に語られるのは、か弱いのが魅力で、一番人気の「まゆ14歳」。
本当は21歳なのに(⁉)、フリフリの子どもっぽいメイド風衣装で試合をし、
彼女の怯えながらも頑張る姿は観客を楽しませるのだそう。
どこか空虚な感じでぼ~っとした印象の、みんなが心配する不安定な子。
子どもの頃のトラウマがあり、おっとりと語られる過去は「……。」となるインパクトがあります。
彼女の話が、最後の展開にいちばんびっくり!
何というか、檻の中での戦い・心の傷・本当はこうしてほしかったという願望が、
うまいこと収束するラスト!
都会の生々しい、ちょっと病んだおとぎ話みたいだと感じました。
でも好きです。変わっていって欲しいなぁ。
ミーコ頑張って度:★★★★★
まゆのつぎに語られるのは、スタイル抜群で大人びているミーコ。
SMクラブで働く19歳。
ガールファイトでも、女王様然とした強い女キャラです。
性格的には、この子がいちばん好き!
何だかんだで真面目で一生懸命で、女の子たちの世話を焼き、
特に不安定なまゆのことは、守ってあげようと決意している、面倒見のいい子。
いままで人に迷惑をかけているけれども、それは彼女の、生まれ持った特殊な性質が原因で。
この能力、上手いこと使えば長所だと思うんだけどなぁ…。
有効活用して、幸せに生きてくれることを祈るばかりです。
かなり癖のあるキャラと絡みますが、あのキャラを何とかできるのは、
この子しかいなさそうなので頑張ってほしい(笑)
皐月、素直になれ度:★★★
バイクを乗り回すボーイッシュな空手少女、19歳。
色々抱えこんでいることがあって、家族と距離を置いています。
突然高校を中退し、いまだくるスポーツ推薦の話も受け入れない…
その理由を誰にも説明しないまま、夜の廃校バトルの世界に飛びこんだ、という経歴の持ち主。
女嫌いなのに、そのつれない感じがうけて、
余計女の子のファンがついてしまうことに、イライラ。
事情的には、何とか安定した平和な暮らしに戻れそうなんだけれども、
彼女自身の、気持ち次第な感じかなぁ。
ある出会いがあるので、これをきっかけに、オープンマインドで生きてほしいです!
戦い方は、三者三様。
痛々しいけど微笑ましい、そんな物語が読みたい人におすすめです!