作者名:サラ・ウォーターズ 創元推理文庫
19世紀半ばのロンドン。17歳になる孤児スウは、故買屋の一家とともに暮らしていた。そんな彼女に顔見知りの詐欺師がある計画を持ちかける。とある令嬢をたぶらかして結婚し、その財産をそっくり奪い取ろうというのだ。スウの役割は令嬢の新しい侍女。スウはためらいながらも、話にのることにするのだが……。
スウが侍女として入ったのは、俗世間とは隔絶した辺鄙な地に建つ城館。そこに住むのは、スウが世話をする令嬢、モード。それに、彼女の伯父と使用人たち。訪ねてくる者と言えば、伯父の年老いた友人たちだけという屋敷で、同い年のスウとモードが親しくなっていくのは当然だった。たとえその背後で、冷酷な計画を進めていようとも。計画の行方は? 二人を待ち受ける運命とは?
CWA最優秀歴史ミステリ長編賞(ヒストリカル・ダガー)受賞作。
韓国映画「お嬢さん」の原作。
面白さは、保証付きです!
ノンストップでハラハラ度:★★★★★
物語は、19世紀のロンドンから始まります。
主人公の少女・スーザン(スウ)は、17歳の孤児。
しかし故買屋の一家とともに暮らし、貧しいながらも、育ての母を慕い暮らしていました。
ある日、顔見知りの詐欺師が、ある田舎の城館に引きこもって伯父と暮らす、
大人しく世間知らずな令嬢・モードに対する詐欺計画を持ちかけてきます。
モードは、詐欺師・通称「紳士」に好意を持っているので、
結婚し彼女が相続する財産を奪ってしまおう…という話、ひどい男だなぁ!
モードを結婚までうまく誘導できるよう、スウに侍女として接近してもらいたいとのことで、
ためらいつつも、スウは計画の片棒を担ぐことにするのですが…。
主人公スウが、詐欺事件を仕掛ける側なので、最初から不穏でハラハラです。
計画はどんどん進行していき、上下巻で長いのに、あれあれどうなるの?
と思っていたら、第1部のラストで、とんでもないことに!
まさか、こういう話だったとは~!
あまりのことに止まらなくなり…週末に時間確保しといてよかった~。
第2部で語られるのは、今までとは違う物語です。
あらら何てこと、と思っていたら、第3部で、恐怖の事態に!
どうするのこれ、収拾つくの?なんて心配してしまった(汗)
第3部はひたすら恐ろしいですが、語り手の‟彼女”は、すさまじいガッツを見せます。
付き合わされる男の子が、かなり不憫ですけど…(泣)
2人から目を離せない度:★★★★
スウと紳士が騙すのは、お城で伯父の仕事を手伝いながら、
それ以外はひたすら粛々と暮らす、籠の中の鳥状態のお嬢様・モード。
モードは最初から、新入り侍女のスウに優しく接し、
もともと面倒見が悪くないスウは、大人しいモードを何かと気にかけるように。
そして、友情以上の感情を、次第に抱くようになります。
「半身」しかり「黄昏の彼女たち」しかり、ウォーターズ作品、あるあるです。
何だか、このまま仲良く城で暮らせないものかな?と思うんですけど、
そうはならないんですよね。
予想以上に、すごい事態になるので、びっくりするけれども(汗)
2人の少女から目を離せませんが、彼女らと関わる大人たち…こちらも曲者!
展開に仰天度:★★★★★
第2部から、驚きの事実が明かされますが、第3部では更なる驚きが。
予想以上に、考え抜かれた計画だったと分かります。
上下巻の大作ですが、えっ?えっ?という感じで進んでいくので、
あまり長いと感じませんでした。
会話が多くテンポも良く、女性が語り手の読みやすい文章ですし。
登場人物たちには、たくさんの秘密がありましたが、
ある人物が、最後まで隠していた秘密が、これまたすごい。
しかし個人的に、いちばんびっくりしたのは、ある人物がとんでもない変態であったこと!
ドン引きレベルです。もう本当にひくわ~!
いや、欲求としては人間的かもしれないけど、やってることがちょっと…。
うわ~ってなった人が多いと思いますよ…。
全体的に、え~?ってなるシーンが多い作品でした!
ハラハラしすぎて、止まらない!
心臓に悪い…一気に読みたくなる、傑作ミステリです!